内容説明
わが国装幀史上屈指の名作、泉鏡花『日本橋』を手がけた日本画家・雪岱。その仕事は、挿絵・装幀はいうにおよばず、舞台美術の世界でも一家をなすほどで、本職の画業に収まらない広がりと奥行を持っていた。同じく画家であり名文家の誉高い鏑木清方から非凡な文才を評価されていたが、遺した文章は多くない。本書は雪岱の死後、有志の計らいで成った貴重な一冊。同時代人による雪岱評アンソロジーを併録。
目次
入谷・龍泉寺
木場
日本橋桧物町
大音寺前
観音堂
長谷雄草紙礼讃
阿修羅王に似た女
古寺巡り
挿絵のモデル―個性なき女性を描いて
春の女〔ほか〕
著者等紹介
小村雪岱[コムラセッタイ]
1887年川越生まれ。本名、安並泰輔。1908年東京美術学校日本画科卒業。在学中、下村観山、のち松岡映丘に師事。1914年、鏡花の『日本橋』の装幀を手がける。1933‐34年には、挿絵の代表作となった『おせん』『お伝地獄』を発表、装幀・挿絵の分野に確固たる地歩を築く。また、舞台美術の分野でも異才を放ち、『一本刀土俵入』『大菩薩峠』など、数多くの作品を制作、一時代を画す。1940年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みつひめ
2
小村雪岱さんって、若死だったんですね。雪岱さんが装丁した鏡花の本、ステキです。舞台装置も、いろいろと手がけていらっしゃって、「藤娘」は今でもベースは六代目のためにデザインしたものが受け継がれているんですよね。真山青果や岡本綺堂の作品の舞台美術も担当しているんですね。大好きな花柳章太郎の衣裳なんかも手がけていらっしゃるのでした。映画なら、DVD等で見られそうな作品がいくつかあるので、おいおい見たいと思いました。2010/08/03
藍鼠
1
装丁が好きで、名前を覚えていたひと。 鏡花を尊敬しきっている調子で淡々と奇行を紹介してらっしゃるのが申し訳ないけどすごく面白かったです。2014/04/12
m-asa
0
京都二年坂ギャラリーにて作品に遭遇した。衝撃だった。こんな人がいたのか、という思い。版画刷り、絵本版のような作品集を衝動買いしてしまった。その後この本を入手。文章力も並ではない。仏像、能面に魅かれる、というのが面白いと思った。2013/11/12
豆狸
0
挫折2013/10/04
hazama
0
明治終わりから昭和初期の穏やかな光景が楽しいエッセイ。阿修羅像に似た女とか、全体に仏像美を女性の形に当てはめて表してたのかな、と思う。泉鏡花についての文章が、鏡花の変人ぶりへのなんのフォローにもなっていない件。2011/07/23