感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
魚京童!
16
もっと、早く、速く、はやく。10時間のものが1時間に。違うな。ちょっと何を考えてるのかわからなかった。「理想的戦闘員とは運動としての突撃隊に加わり政治的に闘う者にほかならない…彼は自分が服している掟をしばしば知りさえしないが、それを夢のなかで暗唱することはできるだろう……このようにして、我々は熱狂的な人間を行進させたのである」2024/06/02
またの名
12
都市が一つの軍事要塞としてひとりでに機能する自動化の夢は、馬が運搬具で象は戦車やトラクター、鳩をメディアとみなす時から始まり、障害者すらも利用可能な部品にして組み込む国家機械へ発展。技術の加速が幾何学的な地政学を無意味にするほどゼロ距離を実現した地球上では、すべての表面が接触してるかのようになる。速度の無限増幅により警報がもはや役に立たない瞬速のうちに奇襲してくるミサイルに対して、国家首脳は迎撃の決定権を下級兵士に、やがて自動装置に委ねざるを得ないと指摘。そして予見される戦争機械という完全自足の絶対精神。2017/10/06
魚京童!
11
違う版か。速度は規制される。では交通する速度だけが問題なのだろうか。瞬間的な速さでもってものごとを規定して、それで我々をしばって良いのだろうか。悪いのだろうか。違うな。私の時間が足りない。お酒を飲んでいると過ぎていく時間と、奪われる翌日の時間。そして詰みあがっていく仕事。もっと、もっと、もっと。なぜだろう。急に時間が足りなくなった。あるいはやりたいことが出てきた。何が違うのだろうか。どうすればいいのだろうか。私には足らない。少し前まで有り余っていたものが。2024/06/09
白義
11
目眩がするようなイメージの奔流、アイディアのヒントが詰まりに詰まった本。速度を軸に政治や都市、軍事を語り、やがて世界の管理・動員化、つまり軍事化と速度固有のメカニズムによる加速で地理という概念が無効化、地政学から時政学への移行を示唆する。現代における戦争機械の駆動の様子をそのまま文章化したような文体はなかなか歯ごたえがあるが、尋常じゃない面白さ。伊藤計劃の虐殺器官が好きなら必読だろう。ヴィリリオは今改めて読まれるべき軍事史家だ2012/01/26
swshght
7
都市/政治/戦争は「速度」を媒介とする。交通機関や道路網は、生活環境に「速度」を発生させるための産物だ。これを機に、停止していた空間に〈非-場所性〉が生成し、空間の優位は「時間」の優位へと変容する。「速度」の導入により、伝達や運搬などの「運動」を必要とする情報および物質は、迅速かつ効率的に機能するようになる。ここでの「迅速に」という副詞は政治と戦争のあらゆる局面で重要となる。判断、決定、破壊などの目的を達成するためには、運動性を備えるあらゆる動作-伝達、運搬、動員、攻撃-が「迅速に」遂行されねばならない。2012/10/15