内容説明
麒麟は至治の世にしか姿を見せぬ動物である。信長は、実名とは関係のない「麟」の字に平和の代への願望を託し、自らの花押とした。発生から、執権北条氏、戦国大名、近現代の政治家まで、花押を読み解く前人未踏の試み。
目次
1 花押小史―類型の変遷を中心に
2 裏返し文字の花押
3 一字の花押
4 二合の花押
5 執権北条氏の花押について
6 十六世紀の武家の花押
7 近現代の花押
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
17
素人目には墨汁の塊としか見えない花押も、草書体などの知識さえあれば本当に「読む」ことができるんだ、という素朴な驚き。もちろん簡単な話ではなく、著者が解釈を保留するケースも散見されるが、基本的なところは全て読み解かれている。何が書いてあるかが分かれば、その花押に込められたメッセージも理解しやすくなるのが道理。織田信長の花押から「麟」の字を析出し、天下布武の印判と合わせて彼の政治思想まであぶり出す手腕には敬服の他ない。2026/01/22
MUNEKAZ
14
「信長の花押は「麟」の図案化」という有名な説の初出本。著者は勝海舟(通称は麟太郎)の花押からヒントを得たというが、素人目には判別不能な図を、傾けたり裏返したりしながら、元の字を探っていく試みは単純に凄いの一言。草書体やくずし字に関する知識が完璧に備わっていなければできない仕事であり、ホントに花押が「読める」のである。近現代の花押も紹介しており、ひらがなやイニシャルのローマ字が由来の花押もあったりして驚かされる。単純な署名の代わりから印章化が進み、図案も複雑化して政治的な意味も付与される。その変遷が面白い。2025/11/16
サネキ
14
佐藤進一といえば中世史家の超ビッグネームですが、古文書学の面でもスーパービッグネームなんだなと感じる一冊でした。織田信長の花押が「麟」を表すことを明らかにした経緯(勝麟太郎の麟と似ていた)からして、守備範囲が広すぎだろとも感じました。
伯爵夫人
5
花押を読もうとはマニアックだなと思っていたけれど本書にはその成り立ちや系統が詳しく書かれていてなかなか奥深い。私としては三角形のどっしりしたものが好きなんだけど、系統を追っていけば北条義時系か。あとは井伊家の丸っこいのも好きだし。花押だけ見てても面白いし、真似して書いてもいい。自分の花押も考えるけど難しいわぁ。2025/11/27
邑尾端子
3
古代から現代に至るまで永く我が国で用いられてきた花押について、文字として解読してみよう、という主旨の一冊。通常の古文書解読とは異なり、角度を傾けたり裏返したり分解したり、あるいは同属者や似た名前の人の花押を片っぱしから見比べて共通点から類推したり・・・とパズルのように解読していくのが面白い。近代の政治家の花押にはローマ字を用いたものも多い、というのは知らなかったので純粋に驚いた。2013/09/05
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