内容説明
学徒動員での教練から戦地での体験の数々を丹念なイラストと文で回想した二十歳の記憶と記録の書。戦争も軍隊も知らない読者に、父や祖父の体験を伝える。
目次
第1章 ぼくは二十歳だった
第2章 兵隊のつくり方
第3章 見習士官、いっちょう上がり
第4章 さすらいの大陸
第5章 とらわれの日々
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪風のねこ@(=´ω`=)
67
私の中の日本軍/山本七平著に同じく、軍隊での教育から戦地、帰還までを綴る。イラストも多く砕けた文章で掴みやすい。ただ、理解し切れまい…と思う。砕けた文章になっているのは、戦争・軍隊に対する著者の内面具現と感じる。それほど狂った世界であった。学びたい盛りに徴兵され、自分の人生から消し去りたい三年間だと云う著者は、人知れず死んでいった戦友の無念を代弁するかの様でもある。ただ一つ間違っちゃならないのは、身分差別は古くから受け継がれた物であり、現世に続いている。それを少しでも無くしたいという意思具現でもあるのだ。2016/03/20
nnpusnsn1945
49
学徒出陣で中国戦線へ行った著者の記録である。イラストが多く、文も平易で読み易い。鯖江の迫撃第3連隊に入営し、習志野学校(ガス戦の学校、迫撃砲を扱う)へ入学し、独立混成第82旅団砲兵大隊第2中隊第1小隊長を務めた。兵営の生活、軍装に階級、中国戦線の様子も伺える。反軍でも軍国主義にもなり切れない若者の心情が面白いと同時に哀しい。2021/02/02
Takao
5
1999年9月15日発行(2003年7月25日、第3刷)。オリジナル版は、1986年7月、晶文社より刊行。著者は1943年10月、行われた「学徒出陣」第1号(当時、早稲田高等学院在学中で20歳)。本書には著者20歳から23歳までの体験が綴られている。前線で消耗する指揮官を補うため、大学生が幹部候補生として促成栽培された。その訓練と戦地中国での体験。そこから戦後世代は何を学ぶか。「新たな戦前」を作らないためにどうしたら良いのか。10数年前、本書を求めたのは、私自身にもそんな思いがあったからなのかもしれない。2020/06/13
ウララ
4
細かな描写。戦争末期に学徒出陣で戦争に行くことになった著者の記録。それほど愛国者でもなく、かといって反戦でもなく、「厭戦争」で軍隊に入ることになるが、自然に兵隊になっていく。あとがきにあったように、この当時は「お国のため」という一言でみな考えることをやめてしまったが、今はそれが「安保」だとか「日米関係」だとかに変わっている。2014/08/03
刳森伸一
4
戦争のくだらなさを伝える素晴らしい戦争体験記。ユーモアを交えながら語っているのですが、そのユーモアを生みだしているのは、旧日本軍が持っていた滑稽さ。そんな滑稽さを描いた本はあまりないのでそれだけでも読む価値ありだと思います。ただ、最後の方の「おわりに」や「あとがき」になると、特定の政治思想が前面に出てくるのが少し残念。そんなこと書かなくても十分反戦なのに。もったいない。2012/08/08