内容説明
近・現代思想のキー概念であるイデオロギー。その意味と役割の変遷、批判の歴史とその意義を、啓蒙主義からポスト構造主義にいたる思想家の論点を紹介しつつ述べた画期的な入門書。
目次
第1章 イデオロギーとは何か?
第2章 イデオロギー戦略
第3章 啓蒙主義から第二インターナショナルへ
第4章 ルカーチからグラムシへ
第5章 アドルノからブルデューへ
第6章 ショーペンハウアーからソレルへ
第7章 ディスクールとイデオロギー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲニウスロキ皇子
8
面白かったけど、タイトルが悪いような気がする。こんがらがったイデオロギー概念をスパッと整理して、あらイデオロギーってよくわからなかったけど結局はこんなものだったのね!なんて展開を期待すると多少面食らうかも。本書はそんな類いの議論ではなくて、イデオロギーとい概念が誕生してからマルクスを経由して現在にいたるまで、その理論的な意味内容がいかなる変遷が見られるのかという議論が中心である。その内容は興味深いし、時々入る茶目っ気たっぷりの喩え話しはとても楽しい。興味があるなら読んで欲しい。2011/11/12
Michael S.
7
テリー・イーグルトンの著作は先に『文学とは何か』を読んで,その語り口が自分の好みなのでこっちも読んだ.イデオロギーについて歴史的,網羅的,かつ執拗,厳密に考察している. なぜ日本社会で,大衆が自分たちの経済状況を悪化させる政策を推し進める自民党政治を長年支持し続け,一方で,経済的・社会的地位を持ち,むしろ体制側を支持しても損はない医師や弁護士,学者あるいは比較的裕福な家庭出身者の中から共産党支持者や政治家が出てくるのか,という個人的な長年の疑問に対する解決への糸口がこの本で見つかったように 思います.2019/11/30
飛燕
4
「Aという語には、Bの意味があるがそうでない場合もある。・・・Zの意味があるがそうでない場合もある」。結論「AにはB~Zの意味があるが、そうでない場合もある」。結局何も言ってないのと同じじゃないか?と思ってしまいそうだが、ウィトゲンシュタインが『哲学探究』で言っていたように、語のオリジナルがピンボケ画像だから、目的次第で自由に境界線を引っ張って使えばよろしいということか。著者がイデオロギーを六つに定義し、それぞれの語用をきっかり述べ、イデオロギーの戦略性を言及しているのはそういう狙いがあったんじゃないか2013/07/05
りだもと
3
イーグルトンはそのユーモラスな語り口に反して真面目な書き手だなと読んで思った。イデオロギーの定義からして断定を避けるし、その変遷も思想家ごとに丁寧に追っている。ただ、その分だけ読者にも真面目にテクストと格闘することを要求していて、前提知識のあるルカーチ~グラムシあたりまでは何とかついていけたが、その後は点でしか理解できず中々つらい読書だった。入門書と思って手を出すと痛い目にあうかも。あと、「イデオロギーとは、強いていえば口臭のようなもので、他人だけが持っているのである」は人を殴るのにちょうどよさそう。2015/02/11
しんかい32
3
3年振りに読んだ。著者のガチマルクス主義なところに共感しない読者でもそういうのはカッコに入れて読めるし、文学とは何かよりだいぶわかりやすいし、相当いい本だった。ただ、イーグルトンというのはあまり器用な人じゃないんだろうな……という気がする。文学とは何かを読んだ時も思ったけど、論敵とのバトル(文学~ではリーヴィス派、イデ~ではポモ一派)が中心なのか、思想史の解説が中心なのかあいまいなんだよな。2014/11/20