内容説明
定家の巧緻、西行の漂泊、式子内親王の憂愁…歌人たちは、その洗練を極めたやまと言葉にどのような心情を託したのか?鋭い感性と深い人間的共感で生き生きと描き出す、絢爛たる和歌の世界。
目次
新古今集の歌(万葉集と古今集;新古今和歌集の誕生;歌合とその周辺;新古今集の歌;枕詞と歌枕と本歌取り)
新古今時代の歌人(後鳥羽院;良経;俊成;定家 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおた
18
白洲正子と新古今集を旅する。万葉集や古今集に比べて難しいと言いながらも、新古今集の重要人物ひとりひとりを丁寧に取り上げ、人から生まれた歌の美しさと空虚さを解き明かす。一見地味な藤原良経が実は新古今集のボス後鳥羽上皇と俊英ゆえに傍若無人の藤原定家を取りなしていたなど、史実にもきちんとあたっている。三島由紀夫も生前に「新古今集を思い返せ」と言っていたとか。幻想文学やファンタジーが好きな方にとって深い歌の森に踏み込む手引き書になりそうな名著。2017/01/29
Noelle
5
新古今の成立、性格その技巧などの解説の前半と、後半代表歌人8人を取り上げる。撰を命じた後鳥羽院と摂政良経、選者の定家、家隆、またその流れの始まりの俊成、独自の境地の式子内親王、西行、頼政など、面白い取り上げ方である。白洲正子の心に引っかかる歌人たち。歌の周辺、歌人の逸話あれこれ、また著名な歌と能との違いなど、目の付け所は白洲正子ならではの趣ある文章。西行は語りつくせないのだろう、別に西行の足跡を追った「西行」一冊がある。素人と謙遜するがいえいえ、歌の本質に迫る鋭い読み込み。日本文化の尊い継承の文章である。2018/03/31
amanon
4
これまで和歌に関する本はそれなりに読んできたが、未だにその良し悪しがよく分からないというのが、正直なところだった。だが、本書を読んで、理解の程は別にして、とりあえず、幾つかの歌を「いいな」と思えたのが収穫か。それは、著者の紹介の巧さは勿論だが、自分の年齢も関係しているのかも(苦笑)。それはともかくとして、著者がすごいのは、学術的な常識に囚われず、自由に歌について語る一方で、歌について、恐らく専門家顔負けの勉強をしていると思われること。やはり何にせよ物を語るには、堅固な土台が無いといけないことを再認識。2020/08/28
amanon
3
何となし気になり、再読。初読の時は、テキストの構成さえも考慮せずに闇雲に読み進めていたことに気づく。反省…また、同時に初読の時以上に和歌の美しさや魅力が染み込んできたような気がする。これも年齢のなせる技か?そして、学術的立場から自由に、そしてなおかつ恐らく学者顔負けの知識を駆使して、和歌やその歴史的背景について、豊富な想像力を交えながら、縦横無尽に語る著者の言葉の豊穣さに改めて驚愕。それから、取り上げられた新古今の読み手それぞれが背負った歴史的背景や人生の重みや切なさが、何とも言えず身にしみてくる…2020/09/03
もじ
3
読む前は、和歌の知識も少ない私には難しいかなと思ったけれど、読み始めたら平明な文章で読みやすく、独自の深い洞察があって面白かった。新古今集の成立と特徴にふれる前半。後半は、後鳥羽院、良経、定家、西行など新古今時代の歌人を取りあげ、彼らが波乱に満ちた生を生きたこと、そして、それぞれの人となりが歌にくっきりと映し出されていることを気づかせる。和歌という、日本文化の底に脈々と流れている川のようなものの、深みや瑞々しさを、改めて感じることができる一冊。2013/07/30