内容説明
スーフィズムとは何か。この神秘主義の伝統を知らずしてイスラムの全体的理解は覚束ない。斯界の大家がその学殖のすべてを傾注してスーフィーの思想・体験・生活の内的構造を平明に説く古典的入門書。
目次
第1章 道
第2章 照明とエクスタシー
第3章 霊知
第4章 神の愛
第5章 聖者と奇蹟
第6章 合一の境地
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nina
29
スーフィズムとはイスラムの律法主義化・形式主義化に対する反動で9世紀ごろ生まれた神秘主義思想。「イスラムの神秘主義」とタイトルでは唱っているが、どうやらイスラム教であるとも言えるしイスラム教でないとも言える、微妙な立ち居地のようだ。それはイスラム教が唯一神の超越性を強調するのに対し、スーフィズムは神と人間の一体性や神の遍在性を説く、所謂汎神論的思想であることが最も噛み合わない点のように見える。さらに様々な宗教の影響も指摘されているが仏教はたしかに類似点が多そうだ。一遍上人の教えなどもよく似ている気がする。2014/10/12
俊
18
イスラームの神秘主義スーフィズムの概説書。ただ歴史を羅列するのではなく、有名な神秘家の言葉や著作を例に挙げながら、スーフィズムを解説している。修行によって自我をなくし神と向き合う、というのは思っていた通りだったけれど、音楽や踊りで陶酔して自我をなくすというのは、厳格な一面を持つイスラームからは想像できなかった。宗教的にどうこうではなく、一文化として心惹かれるものがある。他の宗教の神秘主義についての知識があれば理解が深まるだろう。ない自分には少し難しい本だった。 2015/02/20
bapaksejahtera
15
スーフィズム概説書。著者は80年前に亡くなった英国のイスラム学者である。イスラム思想をスーフィズム中心に分析した井筒俊彦の著作に馴染んでいたので本書は理解しやすかった。イスラム神秘思想の沿革と展開については触れず、自己消滅の末、神との合一を果たした高位のスーフィーの境地を中心に、ルーミーの思索やハッラージュの発言などを通じて詳述するスタイルに特徴があり理解し易い。ともあれ著者はスーフィズムの淵源をプロティスの一者からの流出に置き汎神論的性格を説く。多くの宗教の神秘主義や密教と共通する物を感じ、興味深かった2024/07/23
荒野の狼
8
イスラムの神秘主義であるスーフィーズム研究の第一人者のニコルソンが1914年に書いたThe Mystics of Islamの全訳。 “神秘主義“とされるものは、瞑想などの手法により、自分の中に、神や真理を感じ、それを愛し、あるがまま受け入れ、それと一体化するもの。どの宗教にも見られ、日本では、”梵我一如“の思想がほぼ同じ。従って、禅、新プラトン主義、瞑想(ラージャ・ヨーガ)、上座部仏教などに触れたことのある人にとっては、内容の理解は容易。2013/04/21
しおり
7
苦しい読書だった。読み切りはしたものの何も分からないということが分かっただけだった。私は歴史的な流れに興味があって、その内面ではなかったと読んだ後に思った。新プラトン主義、グノーシス思想といった「フック」を知らなかったためにつかみどころのない内的な話を理解する取っ掛かりすら掴めず。スーフィズムはイスラム教の法律主義に対する反動の側面があった。大遠征時代にオリエント的な思想との遭遇が神秘主義の外的要因にあったのは否定できない。個人的な活動であったファナーへの道が教団として大衆化していった所が気になった2021/01/04
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