内容説明
20世紀歴史学の流れを方向づけたフランス「アナール」学派の創始者が、歴史をその全体性において、深層からとらえなおす「生きた歴史学」を熱のこもった語り口で呼びかける、歴史学入門の古典。
目次
1 歴史と歴史家の反省―一八九二‐一九三三
2 歴史を生きる―歴史学入門
3 嵐に抗して―新しい『年報(アナール)』のマニフェスト
4 シュペングラーからトインビーへ―二つの日和見主義的歴史哲学
5 マルク・ブロックとストラスブール―ある偉大な歴史の思い出
6 新しい歴史へ向かって
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
11
知らなかったのですが、著者はフランスの有名な歴史学者です。歴史を固定化されたものではなく、動的なものとして捉えることが主張されます。2章で歴史学者は歴史のみに取り組むのではなく、様々な分野の学問にも精通しなければならない、例えば量子論さえも知る必要があると書かれており、著者の柔軟な姿勢には心を打たれます。全体的に熱っぽい文章で書かれ、著者の歴史にかける意気込みが強く伝わります。歴史学は人間が行うもので、人間は絶えず変化します。その変化を、この学問自体にも反映させなければならないことが、理解できました。2023/08/12
電羊齋
10
アナール学派の創始者による論集。個人的に印象に残ったのは歴史における「事実」とは何かを論じた箇所。「事実」とは最初から与えられた生(なま)のものではなく、問題を提起し、仮説を立てることによってはじめて史実として姿を現すものであり、そこにはすでに解釈や選択が関わっていることを明確にしている。ここは現代における「歴史認識問題」にも関わる重要なポイントだと思う。またそれまでの文書記録にのみ依存した実証主義を批判し総合的・分野横断的な研究の重要性を訴える。友マルク・ブロックについて書いた文章は思いがこもっている。2021/01/30
ドウ
4
アナール学派の歴史家による講演・論文をまとめた本。かつて西洋史を志していた頃に買ったきりだったもの。文書史料のみへの依存を否定し、人間の営みを徹底的に重視する著者の姿勢が窺える。歴史における「事実」というものは既にそれ自体が構築物であるという主張が印象的。訳者も述べている通り、恐らくは原文が個性的(難解)な為に、読みにくい箇所が散見された。歴史学を志す方にお勧め。2017/05/16
orange21
2
マルク・ブロックに比べるといささか…というかかなり舌の滑りの良い人だなと言う印象がある。そのマルク・ブロックについて書かれた文章は淡々としながらも感傷的でドラマだ。2021/12/12
湯豆腐
2
過去の事実は現在からの解釈によってはじめて存在するとして旧来の素朴実在論を批判し、科学としての歴史学の確率に奔走したフェーヴル。解釈が事実に先行するという発想が歪に発達した「歴史=物語論」が科学としての歴史を否定しようとしている現代の状況は皮肉。2016/01/20