目次
1 形而上学の根本の問い
2 「ある」という語の文法と語原学とによせて
3 存在の本質についての問い
4 存在の限定
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zirou1984
35
「なぜ一体、存在者があるのか、そして、むしろ無があるのではないのか?」ライプニッツにより定式化され、多くの哲学者が問いてきた命題についてハイデガーはこの講演録で雄弁に問いかける。「なぜ一体、存在者があるのか、むしろ無があるのではないのか?」幾度もこの問いに返りながら、アレントをも虜にしたその高揚感のある語り口で存在と思考を対比し、古代ギリシャ語を参照しつつ考察を深めながらも、問いに対する回答を出すことはない。絶えず問い続ける姿勢、それこそが存在の生起であることを指し示している。「なぜ一体…」ほら、そこだ!2013/09/23
かんやん
30
形而上学の根本の問い「なぜ一体存在者があるのか、そしてむしろ無があるのではないか?」に先行する「存在はどうなっているのか」を問うために、「存在」を文法的・語源学的に掘り下げ、プラトン、アリストテレス以前のギリシャに元初的なものを見出す。圧巻なのは、バルメニデス、ソフォクレスなどの読解を通じて、元初の存在把握を把握し直すくだりなのだが、それにしても玄妙、晦渋であり、秘教的な奥義を授けられているような気分がしてくる。つまり厳かであればあるほど、いかがわしさが拭えない。ドギツイ言葉で綴られたまことに厄介な書物。2020/02/25
34
28
哲学に通じる道がある種の衝撃をもってしかこじ開けられないのだとすれば、その意味でのみこれは入門の書と言えるかもしれない。やさしい本ではない。けれど、とくにギリシアの思索の根源を言葉を練り上げるようにしてとり戻そうとしている箇所などは、入念に読み解くならば衝撃が与えられるだろう。その衝撃はさまざまな問いへと道を切り開く。確かなことは、その道が(倫理的に)保護された安全な領域には通じていないということである。そして、哲学という「転倒された世界」のなかには、保護された安全な領域などは存在しないということをも。2018/10/15
またの名
17
電波ポエムと紙一重だとの自覚はあるようで、「普通の考え方にとっては、ここで述べたことはハイデガー的解釈法の強引と偏狭との成果に過ぎないだろう」と容認。しかし本人的にはポエム上等。哲学者恒例の名ばかりな入門講義で、仮象や生成等の存在と対立する概念を持ちだしてもそれもまた存在するため、何を語るにも存在の繋辞から逃れられない事実を示す。科学技術とかに汚染されていく世界にあって現存在(人間)という突発事のうちに存在の諸力が発現し、歴史として芸術等の作品の中へ侵入すると語られるバズワード並みの存在を、とにかく重視。2016/10/20
Ex libris 毒餃子
14
ギリシア哲学や『存在と時間』を読んでから触れるとハイデガーの問題意識が明確化した。パルニメデスの思想に近いところがあるのではないか、と感じるところである。2022/04/23