内容説明
『ファーブル昆虫記』の翻訳で著名な仏文学者が、虫とその背景にある文化に対する熱き想いをこめて編む、豪華絢爛かつ蝶瞰的エッセー付き虫文学アンソロジー。
目次
百虫譜―横井也有『鶉衣』より
クジャクヤママユ
谿間にて
虫愛づる姫君
虱
セルボーンの博物誌(抄)
蝗の大旅行
坑夫(抄)
豊年虫
蚤と鶏
草ひばり
虫のこえごえ
蛾
龍〓譚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
茶器
6
虫を愛する編著者による、虫文学アンソロジー。ヘッセにマンボウ先生、鏡花、百間。そして『蟲愛づる姫君』。表紙のカミキリムシは仏文学者で『ファーブル昆虫記』完訳の編著者自身が描いているそうで。巻末の「『蝶』瞰的」エッセイも虫好きが伝わってきて楽しい。挿絵も可愛らしい。2017/09/01
YO)))
6
珠玉の(或いは"玉虫色"の)虫文学を蒐集した,標本箱のような一冊.小泉八雲「草ひばり」の細やかな情感,鏡花「龍潭譚」のどこまでも地に足の付かない感じも捨て難いが,何と言っても内田百閒「蟲のこゑごゑ」,"読むサウンドスケープ"の素敵さよ! 編者による解説(エッセイ)も時に微笑ましく時に鋭く,人間様の立派さ故に,呵責も容赦もなく小動物を殺す志賀直哉の怖さを語る件りには,成る程・ヒヤリ・ハっとさせられた.2014/02/27
kamome555
2
どの作品も面白く、奥本さんの所感も素敵。『蝗の大旅行/佐藤春夫』は読みたかった短編。台湾で乗りこんだ汽車の向かいの席にちょこんと座るイナゴが一匹。ペコペコと上司を見送る会社員と対比するかのように穏やかなる虫を観察する、語り手の旅先の気分が伝わってくる。2015/10/03
skia
1
作者が好きな、虫が印象的に出てくる作品を集めたアンソロジーと、作者のエッセイが収録されている。国語の教科書に載っていることで有名なヘッセの「少年の日の思い出」や、虫愛ずる姫君など、古今東西問わず集められており、虫好きで小説好きな人間であれば、楽しめるであろう作品に満ちていた。印象的だったのは、志賀直哉の「豊年蟲」と、志賀直哉の虫に対する癇のきつさを述べた作者のエッセイ。2013/01/13