内容説明
国際的商人にして年代記作者―。その栄光と挫折の生涯をたどり、都市文化を担った14世紀イタリア商人のメンタリティ・家族観・世界観を再現する。
目次
1 めでたし聖年
2 読み書き算盤
3 フランドルへ―二つのヨーロッパの対立
4 敏腕の商社員―遍歴商人から定住商人へ
5 ブオナッコルシ商社の成功―商人と家
6 妻と子
7 市民ヴィッラーニの栄光
8 危機の時代
9 破産
10 記録への執念
11 死後の裁判
12 歴史を書くこと
ホーエンシュタウフェンの運命
13 ダンテと年代記作者
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
9
『都市年代記』の作者として知られるフィレンツェの有力商人ジョヴァンニ・ヴィッラーニの人生を軸に、中世イタリアの商人の生きた世界を照らし出す。流動化した都市生活を契約によって予測可能なものにする必要から商人たちは筆まめで何でも記録した。かつ上層市民としての有力商人たちは政治家でもあって都市の栄光を自らのものと感じていた。神を畏れ祖国愛にも富む一方で、要すれば嘘をついてでも自らの利害を守る商人的したたかさも持っている。矛盾に思えるが、たぶん人間の作った法に従って平等に争ってるから負けた奴が悪いちう結果主義だ。2024/01/20
人生ゴルディアス
7
1200年から1350年くらいまでのフィレンツェを中心とした歴史が、ひとりの年代記作者の人生を軸に語られる。著者のことを別の本で知って、ものすごい読みやすくて驚いたので本書も手に取ってみたが、やっぱりすごかった。必ず度量衡を現代のものでも併記し、広さの比較に現代の東京などを出す親切心! そういう本は大体内容も素晴らしいです。原著がだいぶ古いので、参考文献が半世紀前とかなのが残念。2021/10/11
左手爆弾
7
これは面白い。中世イタリアの商人が書いた伝記を追いながら、当時の時代的状況や生活の様子を描き出していく。会社の起源は家族だったり、契約に基づく現地妻がいたりと、興味深い話がたくさん載っている。だがそれ以上に、このように読むこともできる。まだ遠洋航海による大陸間遠隔地貿易はなく、したがってグローバルな経済システム、商業ルールもない。そんな時代に商人はどうやって商売していたのか。現代のビジネスに通じることもあるし、もっと面白い工夫をしているところもある。こうした中世の商人に関する本はもっと増えて欲しい。2014/08/13
ゴジラ 芹沢
4
ヴィッラーニの年代記を主軸に様々な文献で裏を取り当時のフィレンツェ全体の様子を考察するオーソドックスな研究本。 2019/11/25
MUNEKAZ
4
ヴィッラーニの年代記をもとに読み解く中世イタリア商人の世界。年代記には商人らしい現実的な目線と、キリスト教的世界観による宗教的な視点とが混在していてなかなか面白い。またその記述もヴィッラーニ自身の境遇や政治的な地位に左右されており、「信頼できない語り手」もののミステリーのような楽しみ方もできる。2016/12/13
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