出版社内容情報
旗印の「弱い思考」を全面展開し、近代啓蒙思想が奉じる、情報技術の発達にともなって成立するとされる「透明なる社会」の到来などありえないことを解いた歴史的名著。
内容説明
来たるべき情報技術社会を透徹した思考で捉え、世界の多元化、脱現実化、コミュニケーションの多チャンネル化のなかで、「透明なる社会」の到来という近代啓蒙思想の「強い」理想を、その形而上学的な呪縛や限界から解き放とうとする試み。今日における哲学の使命に賭ける、ヴァッティモ一流の「弱い思考」に貫かれた好著。
目次
第1章 ポストモダン―透明なる社会なのか?
第2章 人文科学とコミュニケーション社会
第3章 再発見された神話
第4章 揺らぎの芸術
第5章 ユートピアからヘテロトピアへ
第6章 脱現実化の限界
著者等紹介
ヴァッティモ,ジャンニ[ヴァッティモ,ジャンニ][Vattimo,Gianni]
1936年生。トリノ大学でルイージ・パレイゾンの指導のもと学位を取得した後、ハイデルベルク大学でカール・レーヴィットやハンス・ゲオルク・ガダマーに師事。1969年からトリノ大学正教授(哲学)。イェールやニューヨークをはじめとするアメリカの大学で客員教授を歴任したほか、イタリア各紙誌の論説委員をつとめる。政界にも進出し、現在、欧州議会議員
多賀健太郎[タガケンタロウ]
1974年生。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。哲学・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
8
現代社会についてのちょっとばかり散漫にも一見見える評論的な哲学書かな。ポスト・モダンな、情報化が進み、大きな物語がなくなった現在、弱い思考としての多様性を模索する本なのか。ユートピアからヘテロピアって章が、ちょうどこの前読んだ本と関連してて面白かった。現実に存在しないユートピアを目指す時代から、多くの異なった現実に存在するヘテロピアを作る時代へと変わったようだ。ハイデガーやベンヤミンなどの独特な読みがこの思想家の特徴らしい。2014/02/07
トリスタン
0
「弱い思考」というユニークな概念でひとしきり注目を集めたヴァッテイモの主要著作の一つ。立ち位置が微妙で巧みだと思う。「弱い思考」という概念は、概念としては「弱い」が、社会について斜めの角度からコメントするには最適な概念だったのではないか。2020/05/31