内容説明
引き裂かれるフロイト、繰り返すサイード。ホロコーストとインティファーダの狭間で。サイード最後の、身を賭してのメッセージ。フロイト「『トーテムとタブー』ヘブライ語版への序文」のほか、長原豊「メビウスの環、ゴルディアスの結び目を走らす」、鵜飼哲「フロイトの読者、エドワード・サイード」を収録。
目次
エドワード・サイード紹介(クリストファー・ボラス)
フロイトと非‐ヨーロッパ人(エドワード・W.サイード)
ジャクリーヌ・ローズ紹介(クリストファー・ボラス)
エドワード・サイードへの応答(ジャクリーヌ・ローズ)
註
付録 『トーテムとタブー』ヘブライ語版への序文(ジークムント・フロイト)
メビウスの環、ゴルディアスの結び目を走らす―訳者あとがきに代えて(長原豊)
フロイトの読者、エドワード・サイード―解説に代えて(鵜飼哲)
著者等紹介
長原豊[ナガハラユタカ]
1952年生。東京大学大学院博士課程中退。法政大学教授。日本経済史・経済学理論・社会思想
鵜飼哲[ウカイサトシ]
1955年生。京都大学大学院博士課程修了。一橋大学大学院教授。フランス文学・思想
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
9
アメリカ在住パレスチナ人サイードの講演と、それに対するイスラエルに「還ら」なかったイギリスのユダヤ人フェミニスト女性学者ローズの応答。フロイトは「モーセと一神教」にて、ユダヤ教の根幹にメスを入れ、モーセがユダヤ人ですらなくエジプト人であり一神教もエジプトの一宗教教由来であるという説を唱えた。そこで問題となったのは、ユダヤ人の非ヨーロッパ性であると共に地中海性。セム人たるユダヤ、アラブ人は、「アーリア人」に対立する。起源から他所者であるユダヤ人は、今や逆転して、中東に「ヨーロッパ人飛地」を建設する。2025/01/27
林克也
0
なんとなく理解できたが、結局フロイトそのものをもっとよく読んでからでないと解らないと思う。モーセが非ヨーロッパ人=エジプト人ということなど、ユダヤ教・イスラエルを否定する論点は興味があり、サイードらしさが十分にある本で、訳者もサイード派で、思い入れが強く感じた。2008/05/06
横見鳥
0
アイデンティティーの崩壊がある種の和解をもたらすというならば、モーセの不在の後に表明されるべき言葉とは「ヨーロッパ(キリスト)がまさに存在しない」ではないだろうか。2012/07/19
森中信彦
0
この本のことを早尾貴紀の『ユダヤとイスラエルのあいだ』で知り、読まなくてはと思った。そこではサイードはフロイトを評価しながら、疑問を一部に述べていたことが紹介されていたが、表題の本を読み始めると、いきなりフロイトを批判する言説の連続で、サイードはなぜこんなにフロイトを責めなくてはならないのかというのが第一印象だった。 曰く。「ヨーロッパという制約を超えた他の文化へのフロイトの配慮には屈曲したものがあった」、「彼は、例えばインドや中国の文化に言及しておりますが、(中略)、(続く)2025/01/05