出版社内容情報
日本で初めてユング派分析家の資格を得た心理学者が、長年のカウンセリングを通じて分け入った、ことばにはできないこころの形。
内容説明
人の心などわかるはずがない―心理療法の第一人者が人間の不思議と豊かさを語る。
目次
ただ座っていること
遠くを眺める
人生の味
我を忘れる
型を破る
はてな、はてな
人の心などわかるはずがない
100%正しい忠告はまず役に立たない
心の新鉱脈を掘り当てよう
灯を消す方がよく見えることがある
「心」の科学
日本神話に見る意思決定
心と体
離婚の理由
ITとit
子どもの「時間」体験
子どもは物語が好き
昔話の残酷性について
物語とたましい
民話と幻想
影の世界
アレンジメントについて
心理学公害
自然モデル
香具師
ユング研究所の思い出―分析家の資格試験を受ける話
私の養成術
音のない音
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
65
やはり、河合先生の文章は、こころにも身体にも沁みる。温和でかつ、ユーモアもある、あの語り口を想い出す。こんな視点を持てるようになりたいと切に思う。2021/07/25
Y2K☮
36
「ユング研究所の思い出」が印象深い。白か黒かの明快回答が正しいとは限らぬ。曖昧なものや複雑なものをまとめる行為のプロセスで大事な栄養素を削ぎ落していないか。たとえば決めつけない、囚われない一元論こそ禅の本質だと思うが、欧米人の多くはそれよりも「悟り」というシンプルな結果を求めたがる。たしかに真理はシンプルだがシンプルなものが真理というわけではない。「魂」と「たましい」の違いやフルートがひとつの音しか出せない話も慧眼。己の身体と心の声を大事にするように、他者の発する音のない音にも耳を傾けられる者でありたい。2022/01/04
pirokichi
24
一作家を一冊で紹介する平凡社のこのSTANDARD BOOKSは、これまで神谷美恵子さん、星野道夫さんのを読んだが、ガイドブック的に気軽に手に取れるし、大きさも丁度良く、装丁もきれいでとても良い。なので河合隼雄さんのが発行され即購入した。「幸福ということが、どれほど素晴らしく、あるいは輝かしく見えるとしてもそれが深い悲しみによって支えられていない限り、浮ついたものでしかない、ということを強調したい。恐らく大切なのはそんな悲しみの方なのであろう」「人の心などわかるはずがない」栞の執筆は若松英輔さん。2021/06/08
みどり
19
わたしの母親は河合隼雄先生の本を好んで読んでいて、生活の中に河合先生のスピリットをはしばしに感じられる。今考えるとだが。わたしがあんま学校行かなかったときに、心と身体はバラバラのものではなく密接につながっているという話もしてくれたなとなつかしく思った。p174ここで、われわれは排除するのではなく、それを受け入れることを学ばねばならない。すべて、あること、生じていることを、全体として受け入れること。意地悪な姑に意地悪されて実家に逃げ帰る、相手は悪だと排除するのは安直だというものだ。おもしろいなー2023/02/13
ルル
16
海に行った時、ビーチパラソルを借りたくだりで、「影を買う」という表現をされていた。人間の内面にある光と影をずっと見てきたからなでは、とずっしりときた。2021/09/04