出版社内容情報
大名や国衆に“協力”した「水軍」は江戸時代にもその編制と運用が維持され、徳川将軍家の全国支配と鎖国体制の大きな支柱となった。海上の戦いは果たして戦国時代で終息したのか。
内容説明
「水軍」や「海賊」は本当に消えたのか―。戦国期の徒花のように語られることも多い水軍や海賊は、中近世を通じ、列島全域で重要な役割を担った海上勢力だった。史実を俯瞰的に論ずることで、その存在の本質を描き出す。
目次
はじめに―多様な海賊のあり方。彼らはどこからきて、どこに消えたのか
第1章 戦国時代の水軍と海賊
第2章 瀬戸内海の水軍と海賊
第3章 関東・東海の水軍と海賊
第4章 海上戦闘の広域化・大規模化
第5章 豊臣政権下の水軍と海賊
第6章 朝鮮出兵における水軍と海賊
第7章 江戸時代における水軍と海賊
著者等紹介
小川雄[オガワユウ]
1979年神奈川県生まれ。日本大学大学院文学研究科日本史専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は日本中近世移行期史。逗子市教育委員会非常勤事務嘱託・西尾市史編集委員会執筆員・清瀬市史編纂委員会専門調査員を経て、日本大学文理学部助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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naginoha
49
naginoha家が水軍ルーツと以前どこかで聞いたので、手に取ったが、これが大火傷… ゴリゴリの専門書で、私のような者が読む代物ではありません。 意地で読了したが、内容半分も理解してません(^^ゞ 自分のルーツがどうとかは結局分からずじまいでしたが、中世から近世の、水上の戦国の流れとか、鎖国の維持体制とか、中々知ることの無い話があって興味深かったです。 -/5(評価不可能)2020/11/29
MUNEKAZ
16
著者は領域権力への従属度によって「海賊」と「水軍」を区別し、自立した勢力であった前者が、戦国の統一過程で後者へと収斂していく様子を分析している。それは自由・自立の喪失として否定的に描かれがちな現象だが、同時にその中でも巧みに立ち回り、独立大名と化したものもいたことは面白い。また朝鮮の役で、伝統的な海賊大名が精彩を欠く一方で、数を揃えられる国持の豊臣大名たちが活躍をしたことも印象的。海上勢力の解体と直轄化を進めることが、国家的な海軍の創出へとつながるのは、同時期の欧州とも共通の出来事である。2020/09/12
スプリント
9
単体では取り上げられることが少ない水軍を要した大名や海賊についてフォーカスしています。 島国のため外海での戦う経験が少なかったことが朝鮮戦争で苦戦した理由なのかもしれません。2020/11/23
金監禾重
7
大満足。戦国時代の海上勢力の姿が明瞭になった。村上氏などの海賊もさほど特別な存在ではなく、自由度の高い国衆の一種。豊後から瀬戸内海、紀伊灘から江戸湾にかけての海上勢力の様相がブロックごとに整理され、それが天下統一戦争、外征を経て鎖国・天下泰平の時代に至るまで、陸上の動向と連動しながら描かれている。今川家は水軍運用でも先進的なのか。また本書の特徴として、双方向的な視点での解釈を徹底していることが印象的で、政治情勢がより面白く感じられた。三好氏について読みたくなった。2022/07/15
kawasaki
7
ロマンで語られがちな「海の戦国」。この本の確かな実証志向は、「確かな史料がない」で鉄甲船も亀甲船もバッサリとカットしているところが象徴的。その代わりに、海の領主たちの姿、動員体制、水軍の戦術や技術、中近世移行期の変化をみっちり丹念に浮かび上がらせていく。タイトルは「戦国史」なのだが、時代的には近代が見えるあたりまでが射程で、世界史の中での位置も意欲的に行う。異なるタイプの「海軍」が戦った朝鮮出兵の海上戦闘を詳しく追い、日本と朝鮮の双方の特徴や限界を浮かび上がらせていく点なども興味深い。2020/06/30