出版社内容情報
日本最初の彩色植物図鑑『本草図譜』の著者・岩崎灌園の仕事とその特徴を、多様な人脈や園芸家としての姿勢など、多面的に描き出す。
内容説明
日本初の彩色植物図鑑『本草図譜』をつくった岩崎灌園とはなにものか。どんな仕事を、どんな条件で、どんな人びととのつながりのなかで、成し遂げたのか。本草学者の本道での活躍とともに、園芸の達人として手引書をつくり、救荒書の性格をもつ園芸ダイヤリーを頒布する。それらの書籍自体から、豊富な図版とともに、潅園の全体像を探り出す。
目次
1 きっかけは百科事典『古今要覧稿』
2 日本で初めての彩色植物図鑑『本草図譜』
3 ロングセラーの園芸ハンドブック『草木育種』
4 江戸の自然誌『武江産物志』と採薬記
5 園芸ダイヤリー『種藝年中行事』
おわりに―『自筆雑記』、『茶席挿花集』など
著者等紹介
平野恵[ヒラノケイ]
1965年、大阪府生まれ。博士(文学、総合研究大学院大学)。現在、台東区立中央図書館郷土・資料調査室専門員、東洋大学非常勤講師。専門、日本文化史・思想史、特に園芸文化史、本草学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
志村真幸
1
著者は、江戸の園芸史の研究者。 本書は、『本草図譜』で名高い岩崎灌園を扱った内容。岩崎は名前こそ知られているものの、簡単に読める文献はほとんどなく、手頃な入門書が出たのはありがたい。 その生涯、『本草図譜』の概要、園芸ハンドブックの『草木育種』、谷中という土地、救荒書としての『種藝年中行事』などが語られている。 図も豊富。 ただ、多様な側面から紹介しようという意気込みは買うが……。 2025/02/26
Като́н
0
薬効を求める伝統的本草学は十九世紀に変質を遂げ、動植鉱物を集めては紹介する博物誌的な関心が高まっていた。それを助長したのが蘭学の知識や各地域の名産を集めた物産政策の成果であった。牧野富太郎、飯沼慾斎の『草木図説』を増訂とかもしてるんだ。馬場大助は『群英類聚図譜』で『本草図譜』の伝写の多さを咎めた。しかし残念ながら武田昌次、田中芳男の意見を記した張り紙が貼られるくらいで、岩崎灌園の著作ほど広く読まれなかったらしい。それにしても『草木育種』は本当に売れたと。『菊花壇養種』みたいな剽窃本が出るくらいに。2024/05/02