出版社内容情報
近世、日本の本草学は独自の展開をとげた。薩摩藩主島津重豪を中心に琉球の本草学や大名趣味としての鳥飼いなど博物知の展開を追う。
高津 孝[タカツ タカシ]
著・文・その他
内容説明
江戸後期、日本における博物学の視線は、北は蝦夷地、南は琉球へと向かった。藩主島津重豪に主導された薩摩の博物学は南へと視線を注ぐ。もう一つの特徴は鳥類研究である。国際的な珍獣珍鳥交易のなか、大名趣味としての鳥飼いは、薩摩で養禽書、鳥名辞典、鳥類百科事典へと結実した。重豪を中心に近世本草学・博物学の展開をたどる。
目次
1 薩摩の博物学と島津重豪(琉球人の若者と同仁堂;本草学;天保刊本『質問本草』 ほか)
2 琉球への視線(南西諸島の生物相;南西諸島の歴史;冊封使の琉球情報 ほか)
3 大名趣味としての鳥飼い(珍獣奇鳥の世界的流通;ヒクイドリの渡来;鳥の飼い方ハンドブック―『鳥賞案子』 ほか)
著者等紹介
高津孝[タカツタカシ]
1958年生まれ。大阪府出身。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、鹿児島大学法文教育学域法文学系教授。専攻、中国古典文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Като́н
1
本草とは中国で生まれた薬物の記述で、ものを薬という観点から記述した一種の博物学である。享保の諸国産物調査で花開いた江戸の博物学もっと知りたい。曹占春、『質問本草』、徐葆光『中山伝信録』、田村藍水『中山伝信録産物考』『琉球産物誌』、渡嘉敷通寛『御前本草』。山本読書室の山本亡羊。2024/04/27
紫
1
江戸時代随一の大物蘭癖大名にして薩摩藩八代藩主島津重豪によって切り開かれた薩摩博物学の成果の数々。重豪の一代記と思いきや、琉球の生物相調査、鳥類研究等々、重豪が手がけた代表的な博物学的研究をさらっと解説したもの。鎖国日本の枠をはみ出した島津重豪という人物のスケールの一端はうかがえるのですが、伝記的情報を期待すると当てが外れるのであります。長崎出島を窓口にオランダ一国が相手の鎖国体制を国是としつつ、珍獣、奇鳥等々が持ち込まれ、これらに群がる人々が絶えなかった江戸時代はつくづくヘンな時代なんだなと。星4つ。2018/04/17
志村真幸
0
著者は中国古典文学の研究者。しかし、鹿児島大学所蔵の博物学関連資料の調査を長年にわたって続けてきたという。 「薩摩の博物学と島津重豪」「琉球への視線」「大名趣味としての鳥飼い」の3章から構成され、藩政時代に植物の種や薬用について中国まで問い合わせて調査していたこと、琉球の生物相の研究史、島津家の珍鳥収集の実態が紹介されている。 あまり知られてこなかった薩摩・南西諸島・琉球の博物学の実態がよくわかり、貴重な一冊だ。 多数の図が収録されているので、見ているだけでも楽しい。2021/01/29
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