内容説明
故郷アンティーガを、ユーモラスにかつ愛着と悲哀をこめて語る。植民地支配からポストコロニアル社会へと移行する小国を、美しく率直な文章で綴った作家のもう一つの原点。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
20
輝く青い海を見て興奮し白浜が照り返す陽光の祝福を感じるとき、後ろから憎悪と嫉妬のいり混じった虚ろな眼差しがあなたの背中を突き刺してくるのを感じたことがあるだろうか? あまりにも苛辣な観光ガイドブックである。本書の語りは容赦がない。反復される「あなた」がもたらすのは親密さではなく観光客に対する呪詛であり、無知で醜く間抜けな「あなた」をどこまでも締め上げていく。そして、矛先は「あなた」のみにとどまらず、かつての植民者たち、汚職を繰り返す現代の統治者たち、そして反逆の気骨を失った現地民たちにまで及ぶ。2015/01/25