内容説明
バタイユの思想の総決算、「聖なる神」の無削除完訳。「私は哲学者ではない、狂人か、それとも聖者だ」二十世紀世界を震撼させた破天荒の思想家ジョルジュ・バタイユ。バタイユは爆弾を投下しながら書く。この爆撃のあとに無傷で立ち直れる者、それは…「創造主」(神)を除いて他にはいない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
322
『聖なる神』と題された3部作(最後の1篇は断章ノートのみ)。序文によればピエール・アンジェリック名で出版する予定であったようだ。その序文がエロティシズム及び人間存在のあり方についてのバタイユばりの哲学的考察といった相貌を帯びている。これに続く小説の内容との関係性を含めて難解である。第1部「マダム・エドワルダ」は、パリを舞台にした幻想小説だが、夜の表象の中に即物的にも見えかねない性器的なエロスと死とが混在する。あるいは散文による象徴詩的な作品なのだろう。続く「わが母」を訳者の生田耕作は解説で⇒2022/11/21
かず
4
三島由紀夫は絶賛していたらしいけど、いまいち高尚なエロティシズムを読みとることができなかった。「空の青み」のほうが単純に伝わってきた。2012/05/15
イコ
2
マダム・エドワルダ。我が母。シャルロット・ダンジェルヴィルの三部作。マダム・エドワルダの中盤の神秘的体験のような出来事が、儚く神話的。我が母は、近親相姦的な匂いを醸しつつも心理的な描写が非常に繊細で、悪徳に墜ちていく感覚が疑似体験できる。シャルロットは我が母のほぼ続編だが途中で終わっている。ここからマダム・エドワルダと繋がったら面白かったと思う。猥褻な内容を扱ってるけど、文章力が高過ぎて、詩的表現に酔ってしまった。2020/12/16
コマック
1
三島由紀夫氏の「小説読本」で紹介されていたので読んでみました。難解で私には理解出来ませんでしたが、「エロティシズム」とは何かを考えさせられたような気がしました。2022/11/04
小竹
1
「マダム・エドワルダ」「わが母」「シャルロット・ダンジェルヴィル」から成る性愛三部作。三島由紀夫が「小説とは何か」で激賞していたため十数年ぶりに再読、酷く後悔する。緊張感を持続したまま最後まで持っていく短篇「マダム・エドワルダ」はまだいい。視野狭窄の閉塞感に満ちた「わが母」は消化途中の胃の内容物を目の前で曝け出されたような不快感しか残さない。ところどころ織り込まれる連用形止めは刹那江戸戯作文学を思い起こさせるが、どうにもリズムを崩しているように思われ、且つ「ら」が抜けている点も不快。2018/06/01