内容説明
ヨーロー先生はアメリカの推理小説を四十年間、読み続けた。文庫本を二冊買って新幹線に飛び乗ったら、両方とも下巻で、しかも違う小説だった。なんだか説明不足だと思いながら読んでいたら、下巻だったこともある。それでも、あるいは、だからこそ相変らず推理小説を読むのが止まらない。スティーヴン・キング、ジェイムス・エルロイ、馳星周からマイケル・ギルモアまで、多彩な作品が取り上げられる。傑作エッセイ集。
目次
私の遍歴時代
推理小説の御利益
法廷小説
正義の味方
罪の段階
長いお話
事実とミステリー
受け手のアタマ
キングの世界
大統領のモラル〔ほか〕
著者等紹介
養老孟司［ヨウロウタケシ］
１９３７年生まれ。鎌倉市出身。６２年東京大学医学部卒業。一年間のインターンを経て、解剖学教室に入り、以後解剖学専攻。医学博士。現在、東京大学名誉教授。『からだの見方』でサントリー学芸賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
100
養老先生のミステリー読書録です。こんなにミステリーを読んでおられるとは思ってもいませんでした。鎌倉のご自宅から横須賀線で東京まで通われているときにも鞄の中は本でいっぱいだったようです。1995年から2000年までの間の読書録ですが、海外の作家がお好きなようです。特にスティーブン・キングがかなり出てきます。またディック・フランシスなどは原書、単行本、文庫で三回もお読みになるとかでその愛着ぶりに脱帽です。私も文庫だけで読んでいますが再読しようという気にさせてくれました。2022/12/29
ehirano1
76
＃長いお話を読むことは、もう一つの人生を生きることであり、何も不老長寿の薬を飲むことばかりが、長生きの秘訣ではない。＃小説を読むのをバカにするのは、現実が外の世界にのみあって、自分の中にはないと勝手に信じているからであろう。＃残念なことに「正しい」説明など普通はない、常に「より確からしい」説明だけである。＃他人から正解など、いきなり聞いても役に立たない。役に立つのは、自分で考えて、散々間違いながら、自分の仮説を訂正していくことである。2022/12/14
ehirano1
69
著者がクレイグ・ライスがとても好きだとのことで、クレイグ・ライスファンの当方はなんだか嬉しいです。US在住中に米国人のラボメイト（S.キング中毒）が『何読んでんだ？』ってことでペーパーバックを貸してあげたことが懐かしいです。因みに、そのラボメイトからは「Too much alcohol!」って返事が返って来ました・・・確かにそうなんだけどね。他の感想はないんかい！と苦笑いした記憶がありますｗｗｗ。2021/11/12
ehirano1
60
「裁判というのは現場ではない。言葉による、人間同士の平和なやりとりである。そこで修羅場の話をしたって通じないことが多い。戦争の実態が“銃後の”人になかなか理解できないのも、そうした現場性による（ｐ19）」。なるほどと思いました。では、戦争の実態を“銃後の”人に理解してもらうには、戦争をするわけにはいかないので（むしろしちゃいけない！）、映画や読書といった方法で代理体験するのが最良ではないかと思いました。2022/06/25
ehirano1
58
「推理小説を読むのは普通に言うなら暇つぶしである。しかし、暇がない時ほど本を読もうとするのは、どういうわけか（ｐ223）」。これは多くの方が同感なのではないでしょうか。しかしここらが凄いです。「気を変えたいからであろう。目前の現実に埋もれてしまうと、浮かぶべきアイデアも浮かばなくなってしまう。推理小説を読むことは、旅行をしたり、スポーツをしたりするのと似た機能を持っているに違いない（ｐ223）」、と。2023/08/07
