出版社内容情報
葉室麟[ハムロ リン]
著・文・その他
内容説明
岡野藩領内で隣国との境にある峠の茶店。小柄で寡黙な半平という亭主と、「峠の弁天様」と旅人に親しまれる志乃という女房が、十年ほど前に老夫婦より引き継ぎ慎ましく営んでいる。ところが、ある年の夏、半平と志乃を討つために隣国の結城藩から屈強な七人組の侍が訪ねてきた。ふたりの過去に何があったのか。なぜ斬られなければならないのか。話は十五年前の夏に遡る―。辛い過去と哀しみを背負いながらも、真摯に生きる夫婦の姿が胸を打つ、傑作時代小説。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞、12年『蜩ノ記』で第146回直木賞、16年『鬼神の如く黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やま
126
峠しぐれ 2017.11発行。字の大きさは…中。半平は藩では、志乃の元夫・元家老の反対派の家士であったが。2人は、15年前 志乃の元夫が反対派の武士を暗殺するのを目撃したため、元夫と反対派から追われ藩を離れます。5年後やっと国境にある峠の茶屋を引き継ぎ慎ましく暮らしています。そんな志乃と半平の二人の強い絆が最後まで書かれています。妻は夫を信じ、夫は妻のために命を懸けて妻の元夫の危難を救い。そして、疲れて峠に帰って来ます。妻は、襲撃が有るかもしれない峠の茶屋で夫の帰りを待ちます。読み終って表紙を見ると涙が…2019/12/20
ふじさん
96
峠の茶屋の主人の半平は小柄で寡黙な四十男、女房の志乃は美貌と優しい気遣いで峠の弁天様と呼ばれている。そんな夫婦が、夜狐お仙という女盗賊との対決、藩のお家騒動、半平の剣術指導等、様々な出来事に遭遇しながら、辛い過去と哀しみを背負いながらも真摯に生きる。二人は、過去からの因縁と自分たちの大切な人を守るために、決死の覚悟で死地へ飛び込む。志乃の娘の千春を登場させて一気にクライマックスへと雪崩れ込んでいき、スピーディー展開で見せ場も多く、エンターテイメントの醍醐味を味合わせてくれる。内容盛沢山で読み応え十分。 2022/11/25
じいじ
91
八作目の葉室麟。今作は、じっくりと練りに練った作品だろう、ということが窺えます。本筋の合間合間で、主人公・半兵とその女房・志乃の過去の諸々が語られます。それにより夫婦の人となりに肉付けされていき、読み応えを増しています。この物語、敢えて申せば、少しばかり中身を盛り込み過ぎた感ありますが、主人公夫婦の情愛・母娘の内に秘められた親子愛が、ひしひしと読み手に迫ってくる佳作です。2022/07/28
優希
72
辛い過去を持つ半平と志乃。2人は慎ましく暮らしていますが、隠された過去が明らかになるにつれ、2人の覚悟と強かさに胸打たれます。哀しみを背負いながらも真摯に生きる姿が美しく感じました、2020/12/01
つねじろう
61
もう安定の葉室麟です。峠の茶屋夫婦、寡黙な半助と目鼻立ちがととのってほのかな色気も漂う志乃。その佇まいや仕草から元は武家の出ではないかと噂される。ほらいい感じにいわく因縁ありそうでしょ。この夫婦がそうだからか茶屋を訪れる客も夜逃げから盗賊から恒例の藩の相続争いまで、いわく因縁のオンパレード。最終的にはと言うか、お約束通りと言うか、本家本元の自分達のいわく因縁と対決せざるを得ない展開となる。半助と志乃の絆の強さも見事だけど女盗賊の「夜狐のお仙」がガッツリ良いとこ持っていく。最後の雨の峠の景色に泣かされるよ。2019/07/19