出版社内容情報
昭和30年代の名古屋の繁華街・大須。何でもありのごった煮の街で終戦直後に生まれた碧は母親と二人、つましくも幸せな日々を送っている。将来、映画監督になることを夢見て、アルバイト代で映画館に通う碧。そんなある日、一人の男が母娘の前に現れる――。街を行き交う市電の優しい揺れに乗せて描く、少女のゆるやかな成長物語。
内容説明
戦後の高度経済成長が始まった昭和30年代。碧は母と二人、名古屋の繁華街・大須で暮らしている。娯楽施設や商店がひしめき、個性的な面々が集うこの「ごった煮の街」で、アルバイトしながら足繁く映画館に通う碧の夢は将来、映画監督になること。人々が、つらいことを一瞬でも忘れるような映画を作りたい―。そんな碧の前にある日、一人の男が現れて…。街の移ろいや大人たちとの交流を通して描く、瑞々しい成長物語。
著者等紹介
麻宮ゆり子[マミヤユリコ]
1976年埼玉県生まれ。2003年、小林ゆり名義にて第19回太宰治賞受賞。13年「敬語で旅する四人の男」で第7回小説宝石新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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るい
35
昭和の頃から変わったところも変わらないところもゴチャゴチャと混ざり合う雑多な街、大須の空気感をしっかり感じられる。 物語は作文?見本?を読んでいるみたいできれいに纏められているだけでつまらなかったけれど、大須に行きたくなっちゃう、花電車も見てみたかったな。2021/09/22
のじ
4
大須には今の前の演芸場のときに一度だけ見に行った。各駅停車を乗り継いで行ったから遠かったなぁ。ご飯を食べて演芸を見ただけだからどんな町かはわからなかったけど、にぎやかな感じはした。お話は主人公の碧がやさしく個性豊かな街の人たちに囲まれて成長していくお話で、ぶっそうな出来事にも出会ったりするけれど、おおむね朝ドラのような感じのさわやかなお話でした。昭和30年代くらいの話で、最近自分の町の昔の写真を見たせいもあるけれど、日本がこんな元気な時代に帰ることは、もうないだろうなあと思うと寂しい気もします。2021/12/06
ぱぴ
2
花電車の記憶はないけど、市電が廃止されてからは花バスになったのは覚えてる。2024/05/05
せら
1
まず私は花電車というものを知らず、「花電車って何?」というところからこの本を読み始めました。 高度経済成長期へと移りゆく日本、その時代の中にあった少女の葛藤や夢、人と人との繋がりと温かさが描かれています。 じんわりと優しさが心に沁みるような一冊でした。2022/01/14
なんてひだ
1
凄く良い、凄く良かった。大須は名古屋でもまた違う独特の色合いがあると思っていたが、ごった煮が似合う街なんだよ。花電車が走るくらいだから、ごった煮の言葉が1番似合うのかな。街の出来事が起きるのだけど、その合間合間に入れる動作、秀治がおはようと近付くと洗濯する手に力が入ると、そして富江さんが早く学校へ行けと代わってくれるって、日常が浮かぶのがいいかな。映画館で過ごして映画監督になるって言う、そして有言実行に敬意を表する。大変な男社会で挫けないのは大須で芯が鍛えられたこと。花電車が浮かんだ、つつじのが浮かんだ