出版社内容情報
大切な人を殺された者は言う。「犯罪者に復讐してやりたい」と。凶悪な事件が起きると人々は言う。「被害者と同じ目に遭わせてやりたい」と。20××年、凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。それが「復讐法」だ。目には目を歯には歯を。この法律は果たして被害者たちを救えるのだろうか。復讐とは何かを問いかける衝撃のデビュー作!
小林由香[コバヤシ ユカ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
320
もし自分が同じ境遇になったとしたら、迷うことなく復讐を選ぶだろう。凄惨な事件が相次ぎ、ついに成立した『復讐法』従来の法で裁く以外に、犠牲者が蒙った苦しみを加害者に与える復讐が認められた。復讐を実行できるのは遺族のみ。昨今の痛ましい事件を思う度に思い描いていた究極の遺族救済の法!短編で紡がれる事件の背景。当事者のみが認識する闇と背景。重い。切ない。叫ぶ!考えさせられるのではなく突き付けられる真実!涙が溢れる!慈しもう、思い遣ろう!罪は決して許されないが、今の私はきっと『復讐』を選べない。凄い作品です‼️🙇2020/02/13
さてさて
212
『復讐法』が施行され、『応報監察官』として数々の執行現場を見守ってきた主人公・鳥谷文乃が苦悩する姿を一つの”お仕事小説”として描いたこの作品。そこには五つの短編それぞれの背景の元に、罪を犯した人と、被害者遺族となり、犯罪者に『復讐』を果たそうとする人たちの生々しい姿が描かれていました。『復讐法』の是非に読者の価値観や考え方が執拗に問われる瞬間の連続に、読者の心が激しく揺さぶられ続けるこの作品。いったい何が正義であり、何が悪なのか、読めば読むほどにその解を求めて気が狂いそうにもなる壮絶極まりない絶品でした。2023/04/02
五右衛門
119
読了。今も尚議論が両極端に分かれる犯罪に対する刑罰、死刑を極端ではあるが復讐させることで被害者遺族の心が晴れるかという難しい題材でした。各短編ではありましたが担当官は一人で、被害者遺族のそれぞれの境遇を読んで本当はどうすればいいのか今も尚わかりません。しかし、加害者は許せません。でも、被害者遺族が加害者を同じ目に合わしながら刑を執行する様は自分は出来そうにないけれど良くやった!と思っている自分がいました。これからも酷い事件が起こるたびにこの復讐法を思い出してしまいそうです。2019/08/22
散文の詞
105
とても、重い題材だと思うし、チャレンジした作家に拍手したいくらいですが、どうして、応報監察官という人物の視点で書いたのか。 刑を実行する人の視点で書いた方、人間味というか苦悩と言うか、感情を表現できるような気がします。 どうしても、第三者の視点では、感情の全てが書ききれない気がします。 ただ、題材が題材なだけに、わざと、登場人物を架空の人物のように表現したかったのかもしれませんが。 とはいえ、それぞれに、人生ドラマがあって、うるうるすることは間違いなしです。 2020/02/24
キナコ
101
被害者の遺族が加害者を同じように殺害しても法に問わないとされる『復讐法』が出来た日本が舞台。被害者遺族の気持ちは復讐法で晴れるのか?また生前の被害者の意志はどうなるのか?テーマが重く、しかし面白い作品だった。同じ立場でなければわからないのにも関わらず、軽い正義感やマスメディアによって踊らせれる人々の描写をみていると、本当に何が正義といえるのかを考えされられた。2022/01/16