出版社内容情報
佐川 光晴[サガワ ミツハル]
著・文・その他
内容説明
周三は銀行で不良債権処理に追われる日々を送る。20年勤務し、早期自主退職した周三は、学生時代に封印した登山を再開するつもりでいた。だが母子家庭を支援するNPOバンクに関わることになる。周三自身は父親を知らず、母親とは義絶していた。その母親が今、死に瀕しているという―。人生の岐路に立った男が、自分を見つめ直すとき。共感と静かな感動を呼ぶ長編小説。
著者等紹介
佐川光晴[サガワミツハル]
1965年東京都生まれ。北海道大学法学部卒業。出版社、屠畜場勤務を経て、2000年「生活の設計」(『虹を追いかける男』所収)で新潮新人賞を受賞しデビューする。『縮んだ愛』で野間文芸新人賞、『おれのおばさん』で坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かんちゃん
25
自分の生き方に信念とこだわりを持つ。そんな人たちの物語だ。だが、決して歴史上の傑物たちのことではない。巷に溢れる普通の人たちだ。心の底に固い痼となって居座る体験。これを乗り越えたいという思いと半ば諦める気持ちが同居する。クライマックスでは視界が滲んだ。身近なところにある愛情を再認識する物語だ。2016/02/25
yoneyama
6
再読です。北大山岳部で山を登ってヒマラヤにも登った主人公がバブル末期に都市銀行に就職して山をやめ、バブルの不良債権をひたすら片づける仕事を務めたあと、40代半ばで仕事を辞め・・・という話で、全く登山小説ではないのだけれど、同時代の作家が、同時代を生きたおそらくたくさんの惠迪寮生たちの人生で構成したフィクション・・かもしれません。銀行に行った連中は、多分、こんな風に90年代以降を送ったのだろうか。2021/02/16
悠
1
「山に向かって姿勢を正す」。学生時代にのめりこんでいた登山からはなれ、金融の世界に身をおく主人公が、みずからを奮い立たせる座右の銘にみちびかれて、かつて思い描いていたものとは似ても似つかない日々を送っている我が身をかさねあわせていた。あのころの自分に恥じない生き方ができているか。なにかに打ち込んでえられた経験は、別のフィールドに移っても、生きる規範となって、だれよりもきびしい目をむけてくる。著者にしては思い切ったエンタメ寄りの筋立てに驚いたけど、初心にかえって働くことの意義を見つめなおす良い機会になった。2016/03/30
hasami1025
0
佐川さんの本は毎回迫力を感じます。色々と考えさせられます。そこがとてもよいのですが、アクセントの山の描写が思いの外素敵だったので、今度は佐川さんの冒険小説を読んでみたくなりました。書いてくれないかな~2016/02/22
のりこ
0
題名のとおり、主人公はいかにも山登り好きな感じに表現されている。筋書きもよく、サクサク進んでいたが、最後は、ちょっと残念でした。 それにしても、この題名は、ちょっと昭和の香りで、違う方が良いと思います。2022/09/13