内容説明
母親を自分が通う学校の教師に殺された真裕子は、大学を卒業後、親元を離れる。一方、父親が加害者となった大輔と絵里は、その事を知らずに長崎の祖父母のもとで生活を送っていた。また、事件を取材した新聞記者の建部は長崎に転勤となり、そこで新たな殺人事件に接していた。―運命が変わったあの日から7年。事件に関わる人間の姿を、熟練の筆で描く大作。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960年東京生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務を経て、88年、『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞の優秀作になりデビュー。96年、『凍える牙』で第115回直木三十五賞を受賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
334
本書は最初から、かなりの長編になる覚悟で書き進められたものと思われる。乃南アサの練達の文章力は、読んでいて遅滞感を持つことはないが、物語全体の進行はかなりにゆるやかであ る。一つの犯罪は被害者の家族にも、また加害者の側にも大きな波紋を呼び起こす。それを丹念に追って行くことが、本書のとった方法であり、テーマでもある。上巻を読む限りでは、主な登場人物は真裕子と香織の2人の女性と、大輔と建部の2人の男性であるが、読者は真裕子にも香織にも共感しにくいのではないかと思われる。大輔に対しても同様であり、どうやら⇒2024/03/01
のんき
109
あの事件から七年。母親を殺された真裕子は、大学を卒業し、親元を離れます。今でも、あの事件は、父親や姉のせいもあると思ってます。人の命や運命なんて、自分ではどうしようもないこともあります。世の中だって思った通りにはいきません。でも、絶対にいい方向に向かっているし、諦める必要なんかないし、幸せになってほしいと母親も望んでると思います。わたしも彼女に幸せになってほしいな。父親が加害者となった大輔と絵里は、事件を知らずに長崎の祖父母のもとで育ちます。もし事件を知ったら心や態度や行動は変わるのかなあ。気になります。2019/03/04
さおり
58
「風紋」読了から2か月、続編であるこちらを読んでみました。事件から7年後の彼ら。けどもね、すでに忘れてるんだよね・・・細かいところ。なので、ちょこちょこ「風紋」に戻って確認しつつ進むことになり。先を急ぎたい気持ちと、細かいことまでちゃんとわかって物語に浸りたい気持ちのせめぎあい、みたいな。上を読む限りでは、全然光の見えない彼らのその後に、ただ暗い気持ちになった。「風紋」ではあんなに多かった誤植が全然ないことだけが、私の心の救い。2017/07/06
kei302
56
ヒリヒリとした痛みを伴う。犯罪被害者家族と加害者家族の(風紋から)7年後。再読というか、文庫新装版は初めて。15年前に単行本で読んだときは、真裕子と新しい家族に寄り添った読みだった。ラストを知っているので、大輔の焦燥感や〈大人になるにはもっと時間が必要だ/妹だけは大切にしなければならない、何があっても〉この先、この決意が歪んでいくのが辛い。2020/07/23
坂城 弥生
55
『風紋』から7年。被害者遺族にも加害者家族にも大きな影響を与えた7年前の事件。狂った運命がどう決着するのか、中巻下巻に進みたいと思います。2021/07/16