内容説明
両親が亡くなり、解体した実家の物置の床下から白骨死体が発見された。娘である早紀子と兄の真吾は、25年前の記憶を辿るうちに、ある事件に思い当たり戦慄を覚える。この骨は過去の犯罪を告発すべく現われたのか…。繊細なタッチで描く戦慄の長編サスペンス。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「妻の女友達」で第42回日本推理作家協会賞短篇部門を受賞。96年『恋』で114回直木賞、98年『欲望』で第5回島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で第19回柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で第62回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞、13年『沈黙のひと』で第47回吉川英治文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
120
壊した古い家から、骨が出て来た。 兄妹が、それぞれ誰の骨かを想像し、一人の女性で一致する。 警察からの調べで,意外な女性だったらしい。 関係者が亡くなっているので、起訴,書類送検などにはならない。 壮大な物語で,最後に「懐かしい」わけを感じることができる。 恐怖小説は嫌い。怖々読んだ。 話の持って行き方がうまいなと思った。2012/09/20
アッシュ姉
68
両親亡き後に解体された実家の庭から古い白骨死体が見つかった。一体誰の骨なのか、殺したのは誰か。残された兄妹は記憶を辿るうちにある推測に行き着く。仲睦まじかった両親と恵まれた家庭環境のなかで、封印してきた苦い思い出が指し示すものとは。もっとゾクゾクする怖さを求めていたので、あっさりとした結末のように感じましたが、ご本人のあとがきにあるとおり、時代を超えて今読んでも、充分楽しめる作品でした。2015/06/29
miyumiyu
62
両親亡き後、解体した実家の物置の床下から発見された白骨死体を巡る、時代を越えたミステリー。 おもしろかったけど、やっぱり小池さんは短編がいい。そしてやっぱり背筋をゾクッとさせてほしい。短編の端正でクールな文章が好き。2019/09/25
kei302
54
表紙カバーイラスト、ステキ。Naoさんの装画。1992年の作品新装版。 小池さんの刑事ものミステリ、不慣れな感じが初々しくて、甘い部分はあるが、心理サスペンスとして読み応えがあった。 事件の結末ははっきりしているけど、そこをあえて書かないところに余白があって読後の余韻がある。KindleUnlimited駆け込み読み。2021/09/28
絹恵
43
引っかかったままの過去を取り除くのではなく、記憶を埋めるアマルガムは、本物と偽物の区別を喪いました。記憶を咀嚼して、懐古の音が押し寄せて、不安が胸に迫っても、今はもう残響も届かないところにいってしまったから、それは今を生きるためには必要なく、だから除去する必要もない過去です。罪も罰も風化したその先で生きてきたのだから。2014/11/02