内容説明
物語は「初恋」で始まり「再恋」で終わる―。東京のちいさな商店街にある喫茶店『珈琲屋』の主人・行介は、あることで人を殺した。当時、行介の恋人だった冬子は別の男性と結婚したが、行介が出所すると冬子は離婚していた。冬子に何があったのか…。商店街に暮らす人々が『珈琲屋』で語った人間ドラマを七編収録。情感溢れる連作短編集。
著者等紹介
池永陽[イケナガヨウ]
1950年愛知県豊橋市生まれ。岐阜県立岐南工業高等学校卒業。グラフィックデザイナー、コピーライターを経て、98年『走るジイサン』で第11回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2006年『雲を斬る』で第12回中山義秀賞を受賞。現代小説から時代小説まで、人間の微妙に揺れる心理を描いて定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょこまーぶる
248
久しく積読本だったんですが、ようやく読みました。商店街で古くからの喫茶店というものは常連客の集う所であり、悩み事を相談する場所でもあるんですね。この本には、様々な人間模様が描かれていて、それを押し付けの言葉とか説教ではなく、普通の会話の中で主人公や常連客の心情で諭していくという素晴らしい人々が描かれています。個人的には、二話目の心を忘れた少女推しですかね。それにしても、こんな喫茶店に出会えないものだろうか?2013/07/21
おしゃべりメガネ
236
いい意味で、とてもアッサリした人情物語です。喫茶店「珈琲屋」を舞台に、ワケありマスターを中心としたあらゆる人間関係を、それぞれの視点やおかれた状況によって展開していく人間模様は絶品でした。単純にふんわり&ノンビリとした話だけではなく、どちらかというとブラックユーモアよりな話が多く、幾分シリアスになりながらも、各々が‘再生’へむかっていく展開は非常にココロが救われました。人間誰しもが持つココロの‘すきま風’に対し、どんな思いを自分は、そして周囲の人々は持ち得るのか、考えさせてくれるとても素敵な作品でした。2013/12/29
Yunemo
191
この感覚はしみじみと身にしみる。それぞれ各々の出来事は重いことなのに、良い雰囲気で表現されている。こうした雰囲気を大事にして生きていたい。そう思うような読後感。「思い」というのは、苦しみながら、悲しみながらそれを大事に守っていくこと、それがちゃんとした人間の生き方。一人ひとりの生き方がそれを示している。停滞気味の商店街に住む人々の、苦しみよりも大事にしている生き方、それを一杯の熱いコーヒーで解きほぐしていく、この微妙な気持ちの揺らぎが本当によかった。そういう一冊。2013/02/09
やま
173
東京の下町の商店街にある喫茶店「珈琲屋」に訪れる人々の物語を綴った7編の連作集です。宗田行介37才は、7年余りの刑期を終えて実家に帰って来て、家業である珈琲店を再開します。そこに幼馴染で初恋の冬子が、客として来るところから物語は始まります。人情味あふれる物語の中で「俺のこの右手が人を殺した事を覚えている」という決め台詞が出てきます。そこに相思相愛の美しい冬子が珈琲屋の常連客として登場して癒していきます。シリーズ1作目。字の大きさは…大活字。2021.10.9~16音読で読了。★★★☆☆2021/10/16
優花 🍯モグモグ
158
ゆったりとした時間の中に重みのある人生が詰まっていました。商店街で暮らす人達の様々な悩みや暗い過去。殺人を犯してしまった珈琲屋の店主(行介)の淹れる珈琲や店主の深みのある言葉で救われてる気がしました。いつか、行介や冬子も救われて欲しいなって思いました。2015/06/13