内容説明
「なるべくよく笑って、楽しく暮らしてください」。そんなの無理だと医者に答えたところでしょうがない。栗田匡、47歳。元エリートだが長年無職。金はないが、持病はある。なんとも幸運なことに、若くて美しい23歳の恋人がいる。それなのに、その母親とも深い仲になり、昔の恋人ともヨリが戻ってしまう。隠して続けられるはずもないが、流れゆくままに―。甲斐性なく転落していく匡に、女を引き寄せる魅力がある。その“引力”が分かるか分からないか、意見が真っ二つに割れる話題作。やるせなさをほのかな明るさが包む傑作長編。
著者等紹介
冨士本由紀[フジモトユキ]
1955年島根県松江市出身。広告製作プロダクション、広告代理店勤務を経てフリーのコピーライターとなる。94年に「包帯をまいたイブ」で第7回小説すばる新人賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Satomi
67
私はダメな男に弱い。甘やかしさらにダメにする。為にならないと分かっていてもついつい助けてしまう。この主人公はまさしくダメ男。以前は大手企業で働いていたのに、自らの意志でフェイドアウトしていく。負のスパイラルから抜け出せない。それなのに若い彼女がいて、彼女の母親からも言い寄られ、元カノからもちょっかいを出される。なんだかよく分かるのです。ダメ男には放っておけない何かがあるのです。カレは明らかなダメ男だけれどきっと幸せなんだと思う。幸せって何ですか?と問われているような不思議な読後感。2016/02/17
ばりぼー
58
ふとしたことからエリート街道を踏み外し、パチンコ三昧の自堕落な生活に転落する47歳の鬱病・リウマチ持ちの男が主人公。23歳の恋人がいながら、自分より年下のその母親とも関係を持ち、それが発覚すれば、即元カノのマンションに入り浸るというあまりのクズっぷりに、「貴っ様ー!」と何度罵声を浴びせかけたことか(笑)。そのくせ、ところどころで妙に人生の深淵を覗くような深いフレーズが飛び出すので、読む手が止まらず二度読み。誰もが、「中身は腐っていたとしても、割れない限り表面の殻はいつまでも真っ白な卵」かも知れません。2015/06/28
ケロコ
5
途中何度も、もう読むのを止めてしまおうかと思った。どんよりと暗い雰囲気が重くのしかかって来て苦しかった。生きていくために仕事は必要なんだね。働いているからこその毎日ということに気付かせてくれた。とりあえず、明日からもまた頑張って仕事しよう。2013/01/29
わかめ
5
ダメダメ男のダメっぷりが小気味いいほど。なぜか愛されてしまうのは、優しいから。優しさって、最後にはその人を救うんじゃないかって思います。このタイトルも、あっけらかんとしてていいね。2012/07/17
かえるのこ
4
栗田匡、47歳。元エリートだが長年無職。金はないが、持病はある。なんとも幸運なことに、若くて美しい23歳の恋人がいる。それなのに、その母親とも深い仲になり、昔の恋人ともヨリが戻ってしまう・・・2019/11/28