出版社内容情報
「僕はずっとユウさんといるよ、ユウさんの味方だよ」ユウを貶める謎の手紙が届き始めたことで、ユウは悪夢を見るなど、不安定になり、ますます、書けなくなっていく。ユウを励まし続けるエルだが、ある日、取材を受けた際にフィクションに近い作品をほめる取材者に怒り、さらにノンフィクションは書けないとユウに告げられたその夜、エルはキッチンを破壊してしまう。エルの異常性を感じつつも、書くためにふたりは別荘へと向かう――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
19
私小説を得意とする、しかし書けなくなった作家・ユウ。ゴーストライターをしているという、ユウの熱烈なファン・エルが、行き詰まったユウの生活にゆるりと浸食してくる。やがてそれは、小説という虚構にまで及ぶようになる。私小説という点が重要で、実際に体験したことを小説化する過程には、複雑な思考とデリケートな行為が必要となるはずだ。その危うさ(作家としてはもちろんだが、編集者や読者にとっても)は、単にサスペンスを盛り上げるだけではなく、心理描写を深めることで物語の芯、つまりは主題となっている。(つづく)2020/12/20
みなみ
12
下巻。心理サスペンスのような展開。ゴーストライターをやっている女の子に絡め取られていく主人公。終盤はたぶんこうなんだろうなっていう予想通りに進行するのだが、ラスト近くでもうひとつ山があって驚かされた。混ざり合いすぎてどこまでが現実なのかと思ってしまう。ユウがエルに言われた「どろぼうだよ」は、ユウの意識の中にあるんだろうなと感じる。他人に侵食されていく自己というのは他でもみるテーマだが、この作品は描画の魅力と相まって恐ろしくも面白い。2023/01/28
祐樹一依
2
【○+】ゴーストが主の姿を侵食してしまうかと思ったがそれ以上だった。作家が作品を産み出すということは、いかにして現実に虚構の存在を滑り込ませるか、みたいなことだと個人的には思うけれど、本作で「影」を担うあの人にとっては、どうもそうではないらしい。最後の最後で危うくバカミスになるところだったが踏み留まった。「らしい」ラストだと思います。2022/12/25
sawa
2
映画ではエヴァ・グリーンの演じた妖女が、本作ではかなり異なる造形なのが興味深かったです。確かに日本を舞台にすると、中性的な魅力の僕っ子こそハマるのかも。2021/02/19
hr
1
Kindle Unlimitedで読了。妄想とするには証拠が少ない。原作は手に入るのかな。2025/01/12