出版社内容情報
富生が故郷の館山を離れ上京してから20年以上が経った。母が亡くなってからほとんど帰省することがなくなった実家には、78歳の父が一人で暮らしている。その父の様子が最近おかしい。久しぶりに実家を訪ねた富生が目の当たりにしたのは、父の「老い」だった。不安に駆られた富生は父との同居を決めるが、東京には付き合って8年になる恋人がいて……。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
211
小野寺 史宜は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、タイトル通り、著者らしい作品でした。 彼女の転勤先が大宮なら結婚しても新幹線が使えるし、何とかなると思うのですが・・・ 結婚して孫が生まれれば、父親の認知症防止にもつながります。 https://www.futabasha.co.jp/book/978457524835700000002025/10/04
いつでも母さん
144
これはもう私が知ってる「丸ごと小野寺さん」だった。タイトルだけで胸が切ない。だが、今作は私にはちと物足りない(当方比)あるのは現実、ここに在るのは日常、ここから先が気になるのだ。わかるけど、彼女と別れるかぁ・・(←そこ?)お父さんの話、もっと聞かせてよ。そう、これは願望。私の中にももっと聞いておけば良かった後悔がある(でも話したがらない大正15年生まれだものなぁ)向かうのは老い。父と息子の関係に一つとして同じものはない。それぞれが心に思うだけでも色々あるよね・・2025/09/20
hiace9000
134
不惑の四十歳を迎えた主人公・那須野富生の、不惑ならざる日常のありのままを綴る。すっかりお馴染みの「小野寺一人称」は、フラットな視点で仕事、恋人、結婚、故郷、親の介護を優しく紡ぎ出す。今作は家族小説ならぬ"世代"小説か。『ひと』『まち』の青年主人公らも、やがて迎える壮年世代。追いゆく父と過ごす時間から見えてくる世界、背負うことになるしがらみ、委ねられる決断、知ろうとしなかった事実…。東京から故郷館山に居を移した富生は、そこで自分や家族、周囲への新たな"気づき"を得る。切なくもかけがえのない今がそこにあった。2025/09/12
おしゃべりメガネ
110
タイトルにあるように「父親」との話です。主人公「富生」は40歳で独身。母親は数年前に亡くなっており、最近は父親の言動もあやしく感じはじめ、一緒に住みはじめるコトに。本作は他の小野寺さん作品とはちょっと雰囲気が違っており、改めて高齢者という存在に色々と考えさせてくれます。年齢とともに物忘れも少しずつ増えてきてしまう現実に、なんとも言えない切なさを感じてしまいました。本作で主人公と父親との距離感が、これまたなんとも言えず、色んな意味で自分に当てはめてしまいます。いつかは訪れる老いの現実に考えさせられました。2025/10/17
のぶ
102
主人公の富生は40歳の独身男性。パートナーと8年間交際しているが、結婚の予定はない。母が亡くなってから、78歳の父が一人で故郷の千葉の館山市に暮らしている。その父の様子が最近おかしい。車をぶつける…何度も同じことを聞く、歩くのが遅い…目の当たりにしたのは、父の「老い」だった。父の介護をきっかけに、東京から千葉へ引っ越してくる。いつもの小野寺さんの作品同様に大きな展開は無く、淡々と物語は進んでいく。父親との二人の生活がこれから続いていくことを暗示していくラストが印象的だった。2025/08/30




