出版社内容情報
富生が故郷の館山を離れ上京してから20年以上が経った。母が亡くなってからほとんど帰省することがなくなった実家には、78歳の父が一人で暮らしている。その父の様子が最近おかしい。久しぶりに実家を訪ねた富生が目の当たりにしたのは、父の「老い」だった。不安に駆られた富生は父との同居を決めるが、東京には付き合って8年になる恋人がいて……。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
64
主人公の富生は40歳の独身男性。パートナーと8年間交際しているが、結婚の予定はない。母が亡くなってから、78歳の父が一人で故郷の千葉の館山市に暮らしている。その父の様子が最近おかしい。車をぶつける…何度も同じことを聞く、歩くのが遅い…目の当たりにしたのは、父の「老い」だった。父の介護をきっかけに、東京から千葉へ引っ越してくる。いつもの小野寺さんの作品同様に大きな展開は無く、淡々と物語は進んでいく。父親との二人の生活がこれから続いていくことを暗示していくラストが印象的だった。2025/08/30
sayuri
25
小野寺ワールド全開。78歳で一人暮らしをしている父・敏男の異変に気付き、故郷の館山にある実家に帰郷した40歳の富生が主人公。小野寺さんの淡々とした文章が、父と息子の微妙な距離感とマッチしてとても良かった。車のバンパーの凹み、ぶつけた事を忘れている父。冒頭から不穏な空気が流れ、その嫌な予感は少しずつ増していく。関係性が良かったとは言えない若き日の穴を埋めるように心の距離が近づいていく二人の姿に心が温まる。読みながら亡き父を思い出し、私ももっと話をしておけば良かったと涙が込み上げた。切なくて愛おしい家族小説。2025/09/05
toshi
9
いつもの小野寺史宜と同じく淡々と物語が進んでいくけれど、この作品はただ日常生活を描いているだけ。 自分と父との関係だとか色々裏テーマみたいなものは有るけれど、最後まで何もなく終わってしまう。。2025/09/03
fukui42
5
作者と同じ年齢なので、親も多分同じくらいかな。父の車がへこんでたそのままって、うちもそうだったし。電話もかける。でも1番は顔をすぐに見に行ける距離。自分も親も老いていく。そうなんだよね。息子と父っていう話、案外少ない気がする。2025/08/27
goodchoice
3
今回のテーマは歳とったMCI気味な父との同居である。これは子供として大きな問題で、まだ夫婦二人でいるうちはいいが、片親が亡くなり残された一方の親は子供が気づかない限りどんどん症状が進みがちとなる。主人公は独身なので故郷での同居が可能だったが、結婚していて子供がいる場合はそういかず、親と向き合いが希薄になりつつある現代では、ではどうするとなると手が打ちにくい。小野寺さんらしい今直面する問題を取り上げた一作だった。2025/09/05
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