出版社内容情報
富生が故郷の館山を離れ上京してから20年以上が経った。母が亡くなってからほとんど帰省することがなくなった実家には、78歳の父が一人で暮らしている。その父の様子が最近おかしい。久しぶりに実家を訪ねた富生が目の当たりにしたのは、父の「老い」だった。不安に駆られた富生は父との同居を決めるが、東京には付き合って8年になる恋人がいて……。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
139
これはもう私が知ってる「丸ごと小野寺さん」だった。タイトルだけで胸が切ない。だが、今作は私にはちと物足りない(当方比)あるのは現実、ここに在るのは日常、ここから先が気になるのだ。わかるけど、彼女と別れるかぁ・・(←そこ?)お父さんの話、もっと聞かせてよ。そう、これは願望。私の中にももっと聞いておけば良かった後悔がある(でも話したがらない大正15年生まれだものなぁ)向かうのは老い。父と息子の関係に一つとして同じものはない。それぞれが心に思うだけでも色々あるよね・・2025/09/20
hiace9000
130
不惑の四十歳を迎えた主人公・那須野富生の、不惑ならざる日常のありのままを綴る。すっかりお馴染みの「小野寺一人称」は、フラットな視点で仕事、恋人、結婚、故郷、親の介護を優しく紡ぎ出す。今作は家族小説ならぬ"世代"小説か。『ひと』『まち』の青年主人公らも、やがて迎える壮年世代。追いゆく父と過ごす時間から見えてくる世界、背負うことになるしがらみ、委ねられる決断、知ろうとしなかった事実…。東京から故郷館山に居を移した富生は、そこで自分や家族、周囲への新たな"気づき"を得る。切なくもかけがえのない今がそこにあった。2025/09/12
のぶ
86
主人公の富生は40歳の独身男性。パートナーと8年間交際しているが、結婚の予定はない。母が亡くなってから、78歳の父が一人で故郷の千葉の館山市に暮らしている。その父の様子が最近おかしい。車をぶつける…何度も同じことを聞く、歩くのが遅い…目の当たりにしたのは、父の「老い」だった。父の介護をきっかけに、東京から千葉へ引っ越してくる。いつもの小野寺さんの作品同様に大きな展開は無く、淡々と物語は進んでいく。父親との二人の生活がこれから続いていくことを暗示していくラストが印象的だった。2025/08/30
pohcho
64
40歳の主人公。故郷の館山で一人暮らす78歳の父の様子が少しおかしくなってきたので、東京の家を引き払い実家に戻ることに。仕事はテレワークで問題ないけど、東京には8年付き合った恋人がいて・・。特にドラマチックな展開はないが、老いた父と中年の息子の日常が淡々と描かれる。うちは昨年実家の母が施設入居したので、こんな風に一緒に暮らしてあげることができればどんなによかったかと少しせつない気持ちになりながら読んだ。おそらく、このあとどんどん大変になっていくのだろうが、そこまでは描かないのが小野寺さん。味わい深い物語。2025/09/29
シャコタンブルー
46
奇妙なタイトルだと思っていたが、読後はこのタイトル以外無いと思えた(笑) 父と息子の何気ない会話がとてもいい。雄弁ではないが相手に対する気遣いが感じられる。寡黙で最小限の言葉には優しさや愛が込められている。運転免許返納、認知症、怪我等心配事は山ほどある。それでも日々精一杯生きていく。美しい山、川、海そして懐かしい人がいる故郷。そこには何物にも代えがたい証が存在している。温かくて優しさに包まれた気分になった。2025/10/02
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