出版社内容情報
地方都市・天島市で造船業を営んできた大家・扇谷家で2025年4月、予言者として一族を繁栄させてきたおばあさまの手帳が見つかった。手帳によると、おばあさまは100歳となる今年死亡するらしい。一族の皆が集まり、家じまいをすることになるのだが、本家の娘・立夏には気になることがあった。それは認知症になって以来、おばあさまが繰り返し「若い頃、桜の木の下に死体を埋めた」と言っていたことと、言葉なき者の声を聞く能力を持つ立夏は、それが本当だと知っていること――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pohcho
57
千里眼、過去視、予知、言葉なき者の声を聞く力。不思議な能力を持って生まれてくる扇谷家の女たち。予知能力のある祖母・時子は百歳になる今年(2025年)の十一月に自らの死を予言。一族の皆で家じまいをすることになるが・・。「若い頃人を殺して、桜の木の根元に死体を埋めた」という時子の言葉が一つの謎になっているが、謎の顛末よりは1938年から2025年まで、いろんな時代を生きた扇谷家の人たちのそれぞれの物語に魅了される。不思議でせつなくあたたかい読後感。初めて読む作家さんだがとてもよかった。他の作品も読んでみたい。2025/06/09
ゆのん
44
扇谷家の血をひく女性は代々不思議に力を持って生まれてくる。預言者、千里眼、言葉なき者の声を聞く者。所謂超能力だ。幼い時から超能力に憧れる私にはもの凄く羨ましい。だが、本作を読んでいるとそんなに良いものではないらしい。預言者である祖母の予言帳には自身が死ぬ日が書かれていて一族は『家じまい』を決意する。そんな祖母はかつて殺人を犯し死体を桜の木の下に隠したと言うが桜の木を処分しなければならず悩む一族。設定が笑える程にコミカルなのだが、祖母の過去が判るにつれノスタルジックな気持ちになる。初読み作家だが面白かった。2025/03/07
よっち
27
地方都市・天島市で造船業を営んできた扇谷家。予言者として一族を繁栄させてきたおばあさまの手帳が見つかる物語。手帳にはおばあさまは100歳となる今年亡くなることが書かれていて、それを疑わない一族の皆が集まって家じまいをする準備を始める中、本家の娘・立夏が気にするおばあさまが若い頃、桜の木の下に埋めたという死体と、彼女が知っている言葉なき者の声。時代も変わりつつある中で、扇谷家に生まれる女が超能力を持つことを理由に、結婚や生き方を制限された人たちのそれぞれの選択、そして呪いを巡る真相はなかなか面白かったです。2025/05/28
のぶのぶ
24
我家も本家の家で、親戚が広がっていった家。なので、帰省する思い出がない。家じまい、将来的にあるのかもしれない。我が子達に、がんばってもらうしかない。「長い時間をかけ、いくつかの世代にまたがって、ゆっくり少しずつ、別れ別れになっていく。そうやってわたしたちの絆は小さく遠ざかり、どこまでも大きく広がっていき、想像もつかないような未来で、また出会う。そんなことも、きっとあるのだろう。」我家も父母が亡くなり、従兄弟たちも我家に来ることも無くなるのだろう。不思議な力を持つ女性が生まれてくる。なかなか興味深い。2025/05/30
信兵衛
18
予知された事実を疑うことなく一斉に動き出すという扇谷家の人々、そのために一族14人が加入するLINEグループ【扇谷家の人々】が設けられているというのは愉快、現代的です。 それにしても「家じまい」とは何ぞや? 最後まで読んでそれが分かった時、温かいものに胸満たされた気分です。2025/06/22