出版社内容情報
SNS上の企画「あなたの身に起きた〝鬼〟のエピソードを教えてください」に寄せられた三つの事件。投稿者あるいは関係者三名の前に現れたのは、ひとりの男だった。桧山は「推理ゲーム」と称して隠された真相を暴いていく。秘密にしていたことが知られたとき、すがっていたものが壊れた瞬間、優位だと思っていた自らの立場が危うくなったときの表情が見たい――桧山の真の目的はそれだった。
内容説明
SNSに寄せられた奇妙な事件の話。“真相を知ったときの顔が見たい”男が暴いていくのは、投稿者の別の顔だった―。
著者等紹介
木江恭[キノエキョウ]
1988年神奈川県生まれ。上智大学卒業。2017年に「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」が第39回小説推理新人賞奨励賞に選ばれ、19年に『深淵の怪物』でデビュー。同年、「レモンゼリーのプールで泳ぐ」でドラマデザイン社舞台シナリオ大賞を受賞し、脚本家としても活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
169
人の心には「鬼」が棲む。時に暴れて表に出てしまうんだなぁ・・特に4話目、その女の心に棲むは「母」という鬼。ドキリとしつつ切なく読んだ。気になっていた木江さんの新作は、鬼ごっこ「影踏み鬼」「色鬼」「手つなぎ鬼」「ことろことろ」をモチーフにした連作短編。面白く読んだ。最後まで読んで、なるほどプロローグ/エピローグが巧く効いているなぁと。私の心にも鬼が棲む。一匹じゃないのが辛い・・2023/03/07
ちょろこ
143
鬼遊びとロジックが絶妙の一冊。知ること=解放なのか、考えながらもう少しミステリの鬼遊びを続けていたいそんな罠に陥る。心にしまっておいた「鬼」の話の裏側の数々の事件。その事件の真相を不意打ちのように白日の元に晒す、晒される感覚は決して気分爽快にさせない、逆に深く泥沼に引き摺り込むような、かさぶたを無理やり剥がされるようなそんな感覚。なのにたまらなく心を刺激されてしまうのだ。それも勝手な推測と言いながらも完璧と言えるロジックと共に。影踏鬼、色鬼…誰もが知る鬼遊びとロジックの言い得て妙な絡み合いも絶妙かつ完璧。2023/02/13
とん大西
124
過ぎ去った不穏なエピソードを「鬼」に絡めながら手繰り寄せる真相。明らかにすべきだったか、秘しておくべきだったか。写真家桧山の当事者たちの胸の内を容赦なく抉る机上のロジック。コメディ要素を一切排除した時効警察のような読み味。真犯人が分かれば動機が見えてくる。動機が見えれば往時の激情が180度反転する。「手つなぎ鬼」は凝ってましたね。巧妙な仕掛けっぷりが佳きです。2023/04/02
タイ子
108
ミステリでもなく、探偵小説でもなく、かと言って既に解決されていた事故や事件が1人の人物の口から数年を経て違う解明をされるという、これが真実だと言わないところに余韻があって新鮮。あなたが体験した鬼の話を聞かせてくださいとSNSで募集。その体験者に出会う、桧山というカメラマンの男。実際に募集したのはフリーライターの霧島だが、彼は一向に登場しないのが謎。桧山が聞く鬼の話がそれぞれに面白くてもっと聞かせて欲しいと思ってしまう。そして、最終章で隠し玉を披露。人は誰しも心に鬼を抱えいつ鬼に変わるかもしれない。2023/02/17
yukaring
100
闇の中にチクリと小さな棘を孕むような、ダークで緊張感がある物語。「あなたの体験した『鬼』の話を百字以内で聞かせてください」こんな奇妙なSNSの募集に寄せられた鬼の話。投稿者から"鬼"にまつわる様々な事件を聞き、その独自のロジックで真相を暴く謎の男・桧山。「影踏み鬼」や「色鬼」「手つなぎ鬼」など子供達もよく知る「鬼」に絡んだ事件は予想できない真相や悲しい結末へと繋がっていき、そして何も知らなかった頃にはもう戻れない。「鬼に遭ってしまった者の、その後の人生は」現代でも人の心に鬼は潜み続けているのだとそう思う。2023/03/26