出版社内容情報
男はもうこりごり――夫と離縁してから一人気ままに、女中奉公で暮らしを立ててきた咲。桜の散る頃、新しい奉公先のある上野不忍池を訪れる。畔のあばら家で待っていたのは、幼い頃に母が咲を伴い奉公していた大店のお嬢様、志摩だった。志摩はあばら家を手入れし、男女が逢瀬を愉しむ“出合茶屋”を開くという。さらに妙な色気のある女、香も加わり、三人はよそにない女のための茶屋を作り上げていく。志摩の金勘定と香の客あしらい、咲の絶品料理で評判はうなぎのぼりだったが……。お江戸の訳あり三人女の泣いて笑って心ほぐれる物語。
内容説明
「うんと気の強い女中が欲しい」そんな注文が入り咲は新しい奉公先のある上野池之端を訪れる。不忍池の畔のあばら家で待っていたのは、なんと母が幼い頃の咲を連れて奉公していた大店の元お嬢様、志摩だった。さらに妙な色気のある女、香も加わり、志摩は男女が人目を忍んで逢瀬を楽しむ“出合茶屋”を開くという。やがて、三人の店はよそにない趣向が受けてお江戸で大評判に。だが、次々と厄介事が舞い込んで…?
著者等紹介
泉ゆたか[イズミユタカ]
1982年神奈川県逗子市生まれ。早稲田大学、同大学大学院修士課程修了。2016年「お師匠さま、整いました!」で第十一回小説現代長編新人賞を受賞し作家デビュー。2019年『髪結百花』で第八回日本歴史時代作家協会賞新人賞と第二回細谷正充賞を受賞し話題に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kei
103
男はこりごりの主人公が、うんと気の強い女中を!で、奉公した先は、幼い頃にお仕えしたお嬢様が経営する出合い茶屋、江戸版ラブホだった。彼女が料理を、お嬢さんが金勘定と経営アイディアを、そして、もう1人の寝るのを断れない女中が接客担当を。そこに、風来坊の絵師が加わってのお話し。人には、表裏があり、性という欲望をあっけらかんと女側から主導できる蓮華屋の成り立ちがとにかく痛快。しかし、話しが進むにつれての、4人の来し方には胸が痛み、筆も厳しい。ただ、どんなことがあっても、生きるために働く人への強さを信じる作品でした2023/04/04
タイ子
79
江戸のラブホテルを舞台に繰り広げられる物語。泉さんの作品の中ではちょっと珍しい大人の作品。なので、夏休みの読書感想文に相応しくないので全国のお子たちはご注意あれ!(読まないか)。不忍池畔に新しく出合茶屋を開いた3人の女性たち。それぞれに訳ありの身の上だが、人間生きていれば何かと過去はあります。閃きの女主人、料理上手なお咲、客あしらいの巧いお香。そして、ふらりと来た絵師の左之助。1階は茶屋、2階は密会場所、商売に上り下りはあるもののとにかく3人の女性たちが逞しい。恋あり、諍いあり、賑やかな職業婦人の物語。2023/08/12
ゆのん
65
江戸時代にラブホっ!!訳ありの3人の女性が茶屋を始めた。様々なアイデアで女性が利用しやすい茶屋だ。姉さん肌でアイデアマンの女主人、接客抜群の尻軽、料理上手で母親的存在の出戻りとドタバタしそうな3人だが、笑いあり、涙あり、喧嘩ありで飽きの来ない物語になっている。徐々に明らかになってくる3人の過去を知ると、いつの時代も女性が生きていくのは大変だと感じる。何か起きた時にお互いがお互いを支え合う3人が素敵に思えた。2022/09/30
み
19
何となく読了…。女子のお仕事話しは好物なのにね。2023/05/27
たつたあお
15
訳ありの女三人、お咲、お志摩、お香が、池之端で出合茶屋を始める。転がり込んできた絵師の左之助も含め、様々な人との出会いだったり、事件だったりが描かれる。お志摩に起きた昔の事件も最後にわかった。左之助、妻子がいると言っていたのに、こんなに長い間蓮華屋にいて大丈夫なのだろうか、と心配してしまった。お咲と左之助が両想いっぽくなっていくが、そういう決着をつけたのね。人間には表と裏があり、どちらも本当の自分、暗い部分や悲しい部分が「本当の自分」ではない、というのがよかった。2023/01/29