出版社内容情報
本土返還前夜の沖縄で起きたドル強奪事件を秘密裏に解決せよ! 本土返還50年を前に新鋭が描く昭和史サスペンス
内容説明
警視庁に出向していた琉球警察の真栄田太一警部補は本土復帰が5月15日に迫る1972年4月、那覇にある本部に帰任する。その直後、沖縄内に流通するドル札を回収していた銀行の現金輸送車が襲われ100万ドルが強奪される事件が起きる。琉球警察上層部は真栄田を班長に日米両政府に知られぬよう事件解決を命じるが…。本土復帰50年を前に注目の著者が描くノンストップサスペンス。
著者等紹介
坂上泉[サカガミイズミ]
1990年、兵庫県生まれ。東京大学文学部日本史学研究室で近代史を専攻。卒業後、一般企業に勤務するかたわら、2019年「明治大阪へぼ侍 西南戦役遊撃壮兵実記」で第二十六回松本清張賞を受賞。同作を改題した『へぼ侍』(文藝春秋)でデビュー。二作目となる『インビジブル』は第一六四回直木三十五賞候補に。同作は、第二十三回大藪春彦賞、第七十四回日本推理作家協会賞“長編および連作短編集部門”を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
172
復帰前夜の沖縄が舞台の犯罪小説となれば、どうしても真藤順丈『宝島』や伊東潤『琉球警察』などの先駆作と比べてしまう。設定的に似た部分があるため部分的には面白いが、圧倒的な不完全燃焼に終わってしまった。登場キャラはそれぞれ魅力的だが暴走するほど活躍せず、アメリカ側の内部対立という新しい視点も生かし切れていない。警察・米軍・犯罪者の断片的なエピソードを羅列する手法は物語を混乱させ、構成をわかりにくくしている。何より暑さと熱い血とゴーヤの苦さと政治的激突が混淆した、沖縄のカオスなエネルギーが匂い立ってこないのだ。2022/06/03
しいたけ
105
本土復帰直前の沖縄。まだ戦争の影にどっぷり覆われている。沖縄はどこのものか。島によっても差別が存在する複雑な世界で、自分の拠るべき場所を見出せないでいる警部補真栄田。物語の不穏な始まりは哀しいかたちで回収される。人の汚さが悔い改められることなく繰り返されるループを、できれば見ずに読み終えたいと祈るような思いで読んだ。「俺を裁くのは誰なんだ?日本か?アメリカか?」。登場人物が皆翻弄されるこの命題の重みが、沖縄に行ったことさえない私には理解しきれず情けない。只々戦時下と戦後を彷徨う子どもたちが可哀想だった。2022/07/06
ゆみねこ
95
本土復帰直前に起きた100万ドル強奪事件。琉球警察の真栄田太一警部補は警視庁出向から戻る早々に事件解決の特命を受ける。琉球警察上層部は日米両政府に知られぬように捜査に当たるようにと命ずるが…。本土に対する沖縄の屈託、長年のアメリカ支配への反発、県民の間にも離島と本島での差別がある。真相は沖縄の悲しい歴史の上にあった。2022/06/23
ずっきん
95
27年間米統治下にあった沖縄の揺らぎが筆に載り、ビシバシズドンと腹に来る。本土復帰直前に起きた100万ドル強奪事件を追う琉球警察を描いた戦後史小説。『インビジブル』に続き本作も抜群に面白かった。『宝島』との比較は不可避だと思うが、また違った魅力が満載なのだ。だがしかしだ。読み足りない。魅力的な登場人物たちが踊り足りてない。最終章へと繋ぐための書き込みが足りない。要はページ数が足りない。個人的に著者に対する期待のハードルは爆上がりなので不満も噴出するのである。だからもう一度言っておく。それでも抜群に面白い。2022/06/03
Ikutan
92
沖縄本土復帰目前に、米ドル輸送中の現金輸送車が襲撃を受け100万ドルが奪われた。この事件によって、円ドル交換の履行が出来なくなれば、日米間の高度な外交紛争発展のおそれが。本土復帰特別対策室班長の真栄田は、極秘での捜査を命じられる。日米間で複雑な立場におかれていた琉球政府。復帰への様々な思惑が交錯する。辿り着いた真相は、過去の辛い事件だが、これは今でも永遠に続く問題だ。救いは、真栄田と彼を敵視していた与那覇の関係の変化と女性事務員の新里の活躍かな。"数字と書類は嘘をつかない。嘘をつくのはいつも人間だ。"2022/07/08