いつかたどりつく空の下

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いつかたどりつく空の下

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  • サイズ 46判/ページ数 232p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784575244076
  • NDC分類 K913
  • Cコード C0093

出版社内容情報

葬儀社「せせらぎ典礼」で「湯灌・納棺師」として働く綾乃は、幼いころから母親の愛を十分に受けずに育った。そんな綾乃が、働くことを通して、徐々に生の意味を感じ取っていく感動作。

内容説明

湯潅を終え、老婆の顔に化粧をほどこしてゆく。保湿クリームを少量と、肌の色にあったコンシーラーを丁寧に塗りこむ。そして最後に、明るめのパウダーをはたき、閉じた口元に淡い色の口紅を塗った…。葬儀社「せせらぎ典礼」の湯潅・納棺師として働く綾乃は、小学2年生で母親から棄てられ、孤独の中で生きてきた。様々な仕事を経験したのち、葬儀社での仕事を得て同僚らと過ごすうち、綾乃は徐々にあることに気づいていく。

著者等紹介

八幡橙[ヤハタトウ]
1967年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。出版社に勤務し、教科書や雑誌の編集に携わった後、フリーライターとして活躍。2019年、少年と年上女性の恋愛を描いた『ランドルトの環』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

美紀ちゃん

91
遺体を湯灌し納棺する仕事。先輩の民代さんは納棺と遺体の復元専門で、顔の損傷の激しい「変死体」を修復、復元する特殊技能士。それを引き継ぐ綾乃。綾乃は死にたい願望があるが、沢山の死別を見送り、生きたい気持ちに変わって行く。人間にとって1番怖いことは知ること。人より早く何かに気づく人は、人より早く悲しみを知って、人より早く、そして深く、心を痛める。それでも知りたいことは知りたい。そうやって未知の自分に出会う。いつかみんな死ぬ。焦ることはない。その日が来るまでは、まっすぐに突き進むのみ。表紙の写真がとてもきれい。2021/08/30

そら

71
湯灌・納棺師として葬儀社で働く綾乃は小学2年で母に棄てられ、孤独と共に生きてきた。感情に乏しく、生への執着もなく、あちら側へ逝くことを常にぼんやり思い描いていた綾乃が、先輩納棺師の民代や同僚の間々田と共に様々な葬儀に携わるうちに生への光を見出だしていく物語。ご遺体の状態や湯灌の儀式など、リアルな描写や表現は綺麗事ではない人の終わりを感じた。死を感じることは、生きることを考えるきっかけとなるような気がする。だから、私はこういう物語をあえて読むようにしている。今を大切に生きるために。感謝の心を持つために。2022/04/04

ネロリ

69
「生と死」に向き合った重厚で骨太な作品。 しかしページをめくる手が止まらない。 葬儀社で働きながら、自殺願望を持つ納棺師・睦綾乃(←この設定からして惹き付ける)と、彼女を取り巻く個性豊かな人物たち(特に先輩・民代の物語が秀逸!)。葬儀ものにも関わらず辛気臭くなく、むしろ胸熱展開の数々の物語に引き込まれる。人物一人一人も魅力的で、彼らに感情移入しながらこの世界に浸かってしまった(その辺、帯で吉行和子さんが推薦された通り!) 実生活で身近な人を亡くすことも増える昨今。 涙しながら、心慰められた。傑作!2021/05/21

茉莉花

57
葬儀社「せせらぎ典礼」で「湯灌・納棺師」として働いている睦綾乃。 幼い頃、母親から愛情を与えてもらえることなく、さらには男に、首を絞められたことがある。祖父が死んだ時、綾乃は思った。「いいなぁ、おじいちゃんは。もう、悲しいことも大変なことも、苦しいこともなんにもない、雲を突き抜けた広いところに行けたんだなぁ、って」。今も綾乃はいつでも逝きたいと思っている。そんな綾乃の周りのお話です。綾乃の上司の死。未成年少女が葬儀依頼。父と思われる男の死。綾乃が逝きたいから生きたいと思うようになることはあるのか? 2021/09/13

じょんじょん

47
『ランドルトの環』に続いての2作目。前作が「生」を意識する「動」の作品とすれば、本作は「死」が常にまといつく「静」の作品といえるかもしれません。主人公は葬儀社の「湯灌、納棺」を職とする。そして「向こう側」との挟間に揺らいでいます。仕事で出逢う死、先輩の病気退職と看取り、祖父の死、自分の葬儀を希望する女子高生、そしてシビアな家庭環境と「死」の予感。主人公をとりまく「死」を通して主人公の揺らぎがとまっていきます。親の看取り、闘病など、自分にとり身近になる「死」を深く考える作品でした。「孤独」の反対はなんだろう2021/07/26

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