出版社内容情報
ドイツ・ロマン派の理論的支柱フリードリッヒ・シュレーゲル、この天才的批評家の営為が、現代文学のさまざまな問題の根は「ロマン派」にありとする訳者によって雑誌『アテネ-ウム』創刊期の若い頃を中心に編纂された。文章の含蓄は測り知れず、輝きは無比である。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
10
イロニーと機知による表現の律動、エクリチュールの飛躍の促進こそが有機的総合を備えた文学、思想に繋がるとするその文学理論は、と同時に哲学と修辞学の上下関係の見直し、ルールの転換とも読むことが出来る。古典的理念と現代的ロマンの融合などこれぞロマンチック!というテーマや思索が美しい緊張を孕んだ表現で綴られ、断片的格言集としても素晴らしい。「文学についての会話」は順を追って恐らくシュレーゲル自身の文学観を語りながら、対話形式によるイロニーによって限定されることのない有機性を備えた好編だ2013/01/30
ダイキ
2
「神的存在としての自我というものについて思いを巡らせた事のある者ならば誰でも、遅かれ早かれこう打ち明けなければならなかった。この無限の対象を完全に認識する事は不可能である、と。認識の不完全さは、描写を誘う事になる。全体を包括的に認識する事の不可能なものも、部分的には認識できる。概念という形では表現できないものも、恐らく形象という形でならば描写できるだろう。同じ様に無限なるものを描写しようとする努力は、それを認識する事へと繋がる。一は他によって可能となり、必然的に他を招きよせ、それによって解明され補われる」2016/12/13
moi
1
ベンヤミンの「翻訳者の使命」は、絶対シュレーゲルの芸術批評論を参照しているにちがいない。『ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概念』は未読ですが。2021/12/03
あかふく
1
イロニーを中心として、とりわけ「近代文学」への考察が行われる。それは「拮抗する力がぶつかりあう大海」のようなもので、ここに明らかなように逆説的な語り方がなされる。「負」をこそ「正」に転じる風に肯定される。そしてその重要なイロニーは「自己破壊」を行うものだとされるが、解題にイロニーが「劇中の世界を中断し、相対化してしまう」こととあるのを見ると、これがブレヒト的な異化と近いあたりにあるように思われる。それが自己疎外を契機として含むならば、2014/08/30