出版社内容情報
冬枯れの中、真っ先に咲く花とならん――
新5
内容説明
わずか6歳の娘をアメリカに送り込んだ父、17歳で帰国後、父との葛藤、周囲との軋轢に悩む娘…女子教育の先駆けとなった津田梅子とその父の人生を描いた感動の歴史小説。
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
静岡市出身。東京女子大学史学科卒業。出版社勤務、7年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、作家に。2003年に『桑港にて』で歴史文学賞、09年に『群青 日本海軍の礎を築いた男』で新田次郎文学賞、『彫残二人』(文庫化時に『命の版木』と改題)で中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
93
津田梅子と父・津田仙を描いた物語。わずか6歳でアメリカに渡った梅子が17歳で帰国、父との葛藤や周囲との軋轢に悩み、女子教育の先駆けとなった生涯。読みやすい文章で一気に読了しました。明治の日本は意識の高い女性にとって生き難かったでしょうね。お薦め本です。2020/01/31
trazom
80
津田梅(梅子)の物語であるが、娘を持つ父親として、どうしても、父・仙に感情移入しながら読んでしまう。6歳の娘を10年間のアメリカ留学に送り出す気持ち、あんなに苦労して帰国した娘に活躍の場を与えられないもどかしさ、自らの不義に対する罪悪感などに苦しむ父のたじろぎが、痛いほどわかる。梅を含む、五人の女子留学生が、五人五様に、女性としての幸せの形を求めて健気に生きている姿にも心打たれる。そんな彼女たちの善性に救われ、時々目頭が熱くなる。父と娘の心をつなぐようなタイトルも、素敵だと思う。2020/03/16
あすなろ
76
植松氏による津田梅子と津田塾の作品。と思しきや、その父親の津田仙と津田梅即ち津田梅子の半生に焦点を当てた作品。しかし、やはり植松氏作品に外れなし。そして僕はどちらかというと、この父親 仙に肩入れして読み終えたのである。そして素敵な勝海舟。その他さり気ない筆での精緻さを与える植松氏による当時の歴史・習俗・人物書き込み。まだまだ植松氏の未読作品に期待が同時に昂まったのであった。2020/04/04
真理そら
67
津田梅子の父の津田仙も凄い人だ。父は青山学院創立に、娘は津田塾創立に尽力するとはどれほど教育に熱心な家族なのだろうと驚いた。6歳の女の子なのに渡米する方もさせる方もなみの覚悟ではないが、明治の初期を生き抜くにはこういう勇気も必要だったのかもしれない。勝海舟や森有礼等有名人も多く登場するが伊藤博文が気持ちの良い人物に描かれている(女癖は悪いけれど)。2020/10/19
Ikutan
63
以前読んだ『ひとり白虎』がとても良かったので、こちらも期待大。津田塾大学創始者の津田梅子の物語。だけではなく、女子教育に目を向け、また農業の発展に尽力した、彼女の父親、津田仙の物語でもありました。わずか6歳でアメリカに渡り、10年間も留学生活を送った梅。幼い少女にとってどんなに心細く重荷だったことか。一方、帰国後、不自由な日本語のため、なかなかその能力を生かすことができない梅を見つめる、父親の歯痒さや罪悪感も伝わってきます。一緒に時を過ごした5人の留学生に救われた後半でしたが、少し駆け足だったのが残念。2020/04/02