内容説明
生家は没落、母は自殺、弟は縊死―転落しつつ背負った「解くすべもない惑ひ」とは何か?ただの酒飲みか。偉大な俳人か。流浪する民か。真実の僧か。凄まじい蛇行人生。
目次
第1部 解くすべもない惑ひを背負うて(分け入つても分け入つても;分け入らなければならなかったのはなぜか;親、ボンクラで;切っても切れぬ文芸と銭;落ち延びて熊本 ほか)
第2部 読み解き山頭火(「分け入つても分け入つても青い山」追い込まれて行く先;「まつすぐな道でさみしい」(1)人間の完成を目指して
「まつすぐな道でさみしい」(2)なにがさほどにさみしいのか
「どうしようもないわたしが歩いてゐる」(1)かなりしんどくなって
「どうしようもないわたしが歩いてゐる」(2)空しさ覚える ほか)
著者等紹介
町田康[マチダコウ]
作家。1962(昭和37)年大阪府生まれ。1981年「INU」のボーカリストとして歌手デビュー。97年に小説『くっすん大黒』でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞受賞。2000年に『きれぎれ』で芥川賞、01年に詩集『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、05年『告白』で谷崎潤一郎賞を受賞するなど、著作・受賞歴多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
219
町田 康は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者が今まで知らなかった山頭火を学びながら書いた評伝でした。私も山頭火を名前しか知らなかったので、著者の独自の破天荒な解釈、ナビゲートで入門出来ました。お金持ちのお坊ちゃんからの転落人生、死の彷徨、凄まじい行乞の旅の果てです。「分け入っても分け入っても青い山」 https://www.shunyodo.co.jp/blog/2023/11/info_nyumon_santouka/2024/01/07
ネギっ子gen
57
【分け入っても分け入っても青い山】ほぉーっ、断酒してもなお著者は山頭火について書いてくれますかいな、とホクホク気分で読んだ。山頭火の生家は没落、母は自殺、弟は縊死。転落しつつ背負った「解くすべもない惑ひ」とは何か? 巻末に、山頭火の略年譜、本文掲載俳句索引、参考文献。著者は書く。<山頭火は、句の完成は人間の完成によって初めて成る、という意味のことを書いている。金持ちの家に生まれた山頭火は人を見下すことによって、人をぶち壊し、また、自分もぶち壊れる人間の在り方が嫌でそれから脱却しようとしたように思う>と。⇒2024/02/05
yumiha
47
いわゆる「入門書」は、その道のエライ先生が初心者向けに嚙み砕いてくれるもの。でも本書は、著者自身が初心者だった!のけぞった。だから、上から目線的な「教えてやる」は全くなくて、自信のない箇所は関西弁やら歴史的仮名遣いで誤魔化すと告白までしている町田節が炸裂。山頭火に対しても、エラそぶって批判したり、逆に持ち上げて過大評価したりではなく、著者の体験から共感を見つける。それでいながら、句の読み取りにしても、行乞流転を探るにしても、本質を突いているように思う(※個人の感想です)。ちゅうことで楽しく読了。2024/03/24
chanvesa
35
私は種田山頭火は名前しか知らなかった。だが、この本は町田さんがなぜ山頭火に興味を持ったのかがよくわかる。真面目さとある種の沸騰するような狂気が押し込められたような人間は、『告白』の熊太郎や、「くっすん大黒」からの不思議な世界に通ずる気がする。「自分のなかに自分があって、それによって自分が苦しむ。これこそが、解くすべもない惑ひ」(141頁)は、死による解決しかない(169頁)。自殺未遂を何度も試みるも、生への執着や煩悩との背中合わせとしての生でうまくいかず、行乞という執行猶予を山頭火は生きていく。2024/03/30
メタボン
35
☆☆☆☆ 町田康節炸裂の山頭火評伝。分け入っても分け入っても青い山、どうしようもないわたしが歩いてゐる、うしろ姿のしぐれてゆくか。行乞でしか達することのできぬ境地に、茫然となった。2024/01/25