出版社内容情報
建仁寺の「雲龍図」を描いた男・海北友松。武士の子として、滅んだ実家の再興を夢見つつ、絵師として名を馳せた生涯を描く歴史長篇。
内容説明
晩年に建仁寺の「雲龍図」を描いた男・海北友松の生涯とは。―友松が若くして心ならずも寺に入れられた後、近江浅井家に仕えていた実家・海北家が滅亡する。御家再興を願いながらも絵師の道を選択した友松だが、その身に様々な事件が降りかかる。安国寺恵瓊との出会い、明智光秀の片腕・斎藤利三との友情、そして本能寺の変へ。武人の魂を持ち続けた桃山時代最後の巨匠と呼ばれる絵師を描く歴史長編。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、福岡県北九州市生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞してデビュー。2007年、『銀漢の賦』で松本清張賞、12年、『蜩ノ記』で直木賞、16年、『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月23日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
90
武人の魂を持ち続けた桃山時代最後の巨匠・絵師海北友松が主人公。友松は浅井家の三男として生まれたが、兄の命令で出家し、狩野派の絵を学ぶことになる。海北家は滅亡し、御家再興を願いながらも絵師の道を選択するが、様々な事件に巻き込まれ、時代の流れに翻弄される。安国寺恵瓊との出会い、狩野永徳との出会い、明智光秀の片腕・斎藤利三との親交、そして本能寺の変等。磔にされた友の斎藤利三の遺体を奪還して葬ったシーンには心打たれた。生き方に感銘を受けた明智光秀と斎藤利三の死は、その後の彼の人生を大きな影響を与えることになる。2023/08/14
chantal(シャンタール)
80
太閤記などでちょこっと描かれる絵師、海北友松。武士の家に生まれながら幼くして寺へやられ出家するが武士への道が諦めきれない。安国寺恵瓊や斎藤利三との関わりの中で戦国の世を生き抜き、老境に達してから絵師として頭角を現す。建仁寺の雲龍図はまだ見ていないが狩野探幽が描いた妙心寺法堂の雲龍図はこの本をくれた読友さんと一緒に鑑賞した。友松が一時師事した狩野永徳の一門である探幽はもしかしたら友松に影響されたのかな?等と想像しながら読んだ。建仁寺へ仏活に行かねば。妙心寺にもまたあの迫力の雲龍図を見に行きたい。2022/02/01
Koji Eguchi
57
推し作家の図書館ぱっと見借り。他の作品のように胸を熱くする場面はないが★★★。海北友松という絵師は知らなかったが、歴史本の題材になるくらい紆余曲折しながら武人の魂を持ち自分の道を探し求め、戦国時代の中で流れに一石を投じる役目を果たす。恵王夐(えけい)や狩野永徳、斎藤利三などとの交流から自分を見つめ直しながら、人としての美しさを追い求め貪欲に様々な場に出向いていく。解説にあるように、作者も大変美しい生き方をされたよう。自らの信念や意思を貫き、未練がましくなく潔く生きる。私もそのような生き方をしたいものだ。2024/09/20
tamami
47
しばらく前に葉室さんの『洛中洛外をゆく』を読み、そこで話題とされていた本書を手にする。戦国の歴史の流れの中に主人公の事蹟が点々と記され、それが線になっていく面白さを味わう。本書の解説者澤田瞳子さんは、「これほど書き手の人柄と作品が合致した小説家を、私は知らない」と記す。その作者葉室麟さんによって海北友松の生涯を通して描かれる戦国の武士の生き様に感慨を深くする。また手許にある海北友松の作品集等を見るにつけても、一枚の絵に潜む作者の想念を思い、世界が広がってゆくのを感じる。葉室さんの世界をもっと読みたくなる。2022/09/10
紅香
32
歴史は知らないことばかり。いつも新しい発見があり、驚かされる。その縁と生きざまに。。海北友松。その名は建仁寺での龍雲図で一挙に私の心を占めた。龍図が好きになったのもこの障壁画に魅了されたからだ。武人であるか、絵師で生きるかの迷いの最中、様々な正義を掲げ美しく生きた、無残に散った正義があった。織田信長より明智光秀派だったその生い立ち。法華宗。小さな破綻。あの龍雲図に込めた思いはきっとこうだったに違いない。葉室さんの心と相まって、さらに深い感慨を覚えた。あの龍はもうあの二人にしか見えない。また会いに行きたい。2019/12/25
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