出版社内容情報
なぜ、蘇我入鹿は殺されなければならなかったのか――最新の研究成果を踏まえ、東アジアを舞台に入鹿の知られざる実像に迫る長編小説。
内容説明
日本史上最も悪評高い蘇我入鹿。しかし彼こそが「改革者」であった!?―七世紀前半、大陸統一を果たした大唐帝国の脅威は、倭国に迫りつつあった。遣唐使に密かに同行し、唐の実情を目の当たりにした入鹿は、皇極女帝の信頼を得て、国を守るべく、新しい国づくりに邁進するが…。彼は、なぜ殺されなければならなかったのか。黒幕は誰か。最新の研究を取り入れつつ、大胆に謎に迫る古代巨編。
著者等紹介
町井登志夫[マチイトシオ]
1964年生まれ。南山大学教育学部卒業。96年、『電脳のイヴ』で第3回ホワイトハート優秀賞を受賞。2001年、『今池電波聖ゴミマリア』で第2回小松左京賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tadashi Tanohata
26
あの蘇我入鹿が実はスーパーヒーローだった。飛鳥の都や難波の湊、韓半島から大陸まて縦横無尽に駆け回る。現代同様に大陸からの脅威を憂い倭国の拙い体制を慮る。んんんー! こんないい人だったかー?私の中の「大化の改新」が意味合いが変わるじゃないか。まぁそのあたりは次作に選んだ「白村江」(荒山徹)で修正しよう。これも読書の醍醐味。2022/11/23
とも
25
★★★☆歴史中最大の悪人とされている蘇我入鹿とその一族。彼らが、天皇をないがしろにするどころか、取って代わろうとするのを英雄中大兄皇子とのちの藤原氏の始祖 中臣鎌足が大化の改新、最近では乙巳の変と呼ばれているようだがこの改革によって倒して善政を敷く、というのが歴史の教科書。が、最近になって勝者によって作られた歴史ではとなってきている。少々無茶な拡大解釈も加えながら、それでも実際には結構リアルはこんな感じじゃないのかなぁと思えてくるから面白く、一読の価値あり。2020/07/01
TheWho
8
痛快古代エンタメ小説の「爆撃聖徳太子」の続編に当たる作品で、著者四作目。今回は、日本古代史上最悪人として有名な蘇我入鹿を主人公に唐の思惑と朝鮮半島の争乱に倭国(日本)が直面する存亡の危機を憂い活躍する英雄としての蘇我入鹿を描き切っている。入鹿は志那本土や朝鮮半島に出向き、唐や高句麗、百済、新羅の思惑を把握しながら断固として朝鮮半島への介入を避けるが大化の改新で非業の死を迎えるが、後の白村江の戦の悲劇を考えると著者の硬質な歴史観に感銘を受けた。単なるエンタメ小説とは、一線を画すお薦めの一冊です2025/03/09
yamakujira
7
この時代を舞台にしたらフィクションが多くなるのはやむを得ないし、エンタメ時代劇のような切り口ならば史実を無視する冒険譚もいいと思うけれど、あまりにも浅薄な展開にげんなりする。剣の達人でもいいし、唐や百済に潜行してもかまわないから、乙巳の変の背景をもっと歴史小説としておもしろく書いてほしかった。タイトルに反して入鹿が改革者って側面をまったく感じないから、陳腐な「飛鳥燃ゆ」って原題の方がまだましに思える。この著者の他の著作が「爆撃聖徳太子」とか「諸葛孔明対卑弥呼」って、もう読みたくないな。 (★★☆☆☆)2019/03/01
もりのき
4
「蘇我入鹿の冒険と成長の物語」かなあ。ストーリーは面白かったです。この作品の中での蘇我入鹿という人物は魅力的だし、ワクワクしながら読み進みました。でも、大化の改新の裏側というからには、もう少し敵対勢力側のそこに至るまでの過程をもっと丁寧に描写してくれたら満足度はもっと上がったのになと思います。敵対勢力とその黒幕の、大化の改新をおこすための義とか理由とか必然性が私には伝わらなかったのです。2017/09/18