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内容説明
一七七六年に初巻が発売されるや、たちまち希代の名著としての地位を確立したギボンの『ローマ帝国衰亡史』。その絶大なる人気ゆえに激しい批評にもさらされたが、論敵からでさえ「言語が続くかぎり、この書は永遠に続く」と評価されたこの歴史書に、現代人は何を学ぶべきなのか。本書では、原著に記された各時代の代表的な章を選び、下巻(第8章~終章)では、ユリアヌス帝の登場からローマの滅亡までの歴史を眺望する。
目次
高まるユリアヌスの名声
奸臣たちの策略
苦悩する副帝
臣下としての忍従
「親愛なる兵士諸君よ!」
あらがえない奔流のなかで
せまる内戦に向けて
一方における和解工作
忍従の終わり
ガリア軍の快進撃〔ほか〕
著者等紹介
中倉玄喜[ナカクラゲンキ]
1948年、長崎県平戸市生まれ。高知大学文理学部化学科卒。在日外国大使館、翻訳会社経営、環境英字紙の発行人などを経て、現在ローマ史関係の翻訳を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
バズリクソンズ
24
下巻で遂に西、東の両ローマ帝国の滅亡が著されるが、盛者必衰という言葉をこれでもかと思い知らされる内容。数多の建築、美術品もローマ帝国が起源であり、キリスト教を国教に制定し、元老院議員が権力を樹立し、貿易の点でも他の地域を圧倒していた様子が伺えるが、ギボンの原書より大分端折られている為、細かな内容まで把握するには不十分ではある著書。これをベースにまたローマ史関連の書籍に挑戦したい。この下巻は東ローマの凋落振りをギボンがそれまでの筆致を異にして書かれていて、この部分が大変興味深く読めた。巻末の年表も素晴らしい2022/12/17
イプシロン
20
全11巻におよぶ衰亡史を上下巻にしているので、不満足はある。が、大約のローマ史を知りたいなら十分な内容だろう。衰亡の要因をマクロで考えるなら、社会情勢の変化に対して情報・人・物・金が追いついていけない巨大な領土をもってしまったからと読んだ。むろん、人のもつ貪欲さ、虚栄心なども見逃せないのだが。下巻最大の読みどろこは11章にある「人類の進歩について」だろう。人類がギボンのあげた3項目への叡智を失わない限り、なんとか生き残っていけると思えたからだ。2018/05/12
MAT-TUN
9
上下巻ともに満足のいくものだった。イスラム教やイスラム社会に対するギボンの考察も興味深く、偏見無く本質を考察している。ヨーロッパで消滅しかかった古代ギリシアの知的遺産をアラビア語に翻訳し、その命脈を保っていたことなども明記している。これは立派な態度だと思う。衰亡の過程をつぶさにみると、私は清国のアヘン戦争前の世相と少しダブって見えた。清国では尚武の精神に富む屈強な満州騎馬隊の栄光が、建国より数百年ののち消え去り、堕落して使い物にならない軍が残っていた。そんなときでのイギリスとの交戦に勝利の可能性は無かった2013/07/06
matsuri_n
1
西洋史素人、なんとかこの大著(抄訳だけど)を読み終えることができた...古代、紀元前から始まって読み終えたら中世に至る壮大さよ。そういう意味では、千年紀を超えて1つのシステムが存続することにそもそもの無理があるのかもしれない。とはいえ、(内戦したり分裂したり)ローマ帝国という同一性がどこまであるかは正直なところ疑問では? 解説にもある通り、ある意味でローマは今でも生き続けていると言えるか。2023/12/17
かみかみ
0
評価:★★★★☆ ユリアヌスからテオドシウス死後の東西分裂、そしてオスマン帝国によるコンスタンティノープル陥落まで。植民地時代の英国において、「ローマ人としてのアイデンティティ」がローマとその周辺の民衆の傲慢さや排他主義を生んでゴート人によるローマ陥落を招いたこと、イスラーム諸王朝が古代ギリシャ以来の学芸を保護、深化させたことを指摘する、という客観的記述に徹したギボンの姿勢は評価したい。2013/09/12