内容説明
明治・大正・昭和と、三井財閥のトップとして、日銀総裁として、大蔵兼商工大臣として、怒涛の人生を走り抜けた池田成彬―。しかし、日本の財界をリードしつづけたその業績と較べると、彼の名前はあまりにも知られていない。金融恐慌、2・26事件、そして太平洋戦争と、逆風吹き荒れるなか、世間の悪評を物ともせずに突き進み、歴史の荒波に消えていった池田成彬の生涯に光を当てた長編小説。
著者等紹介
江上剛[エガミゴウ]
1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1977年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。2003年3月に同行を退職し、執筆生活に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Syo
34
う〜む。 凄い。 名前を知らなかったことも。 う〜む。2021/07/20
まつうら
27
池田成彬のことを知ったのは、銀行員時代の小林一三と絡んでいたことくらいで、三井の重鎮のひとりとしか思っていなかった。それが、この作品を読み始めてビックリする。酷いことに、晩年の鈴木商店に引導を渡し、昭和初期の金融恐慌につながる決断をしたのが成彬だ。なので最初は成彬のことを、融通のきかない堅物だとしか思えなかった。しかし、時代とともに戦争の影が濃くなっていく中で、彼の剛直で正直な生き方に尊敬を抱くように変わってきた。最後に東条英機が持ち掛けてきた、徴兵した息子を内勤にしてやるとの取引は絶対に許せない!2022/02/06
ちゃあぼう
5
池田成彬という三井銀行での活躍を中心にして三井財閥や日本経済の安定に奔走した軌跡を描いている。私はこの池田成彬氏のことは知らなかったのだが、経済界では相当な有名な方なのですね。銀行員としてデータではなく相手の経営者そのものを自分の目で見て、話を聞いて判断をする。そして、それがほとんど間違いのない結果になるのは凄い能力だと思う。池田氏の相手のことを想い厳しく接することも結局は相手のためになっている。そして、どんな強い相手だろうと毅然とした態度で接することは中々できないものだがそれをやり遂げることに尊敬する。2023/06/17
あとも
5
三井財閥のトップ経営者・日銀総裁・大蔵兼商工大臣として戦前戦後の激動の時代を生きた池田成彬の生涯を描いたもの。 決断と、その結果に弁明をすることのなくリーダーシップをとる姿に、自分もかくありたいと思った。 太平洋戦争末期、終戦に向けて画策をする池田に対して、とある人物が究極の選択を迫る場面が胸に迫った。 2011/06/11
しのはら(か)
5
ロンドン軍縮会議の際の野党政友会(犬養毅と鳩山一郎)が与党攻撃の口実に使った「統帥権干犯問題」が軍の暴走につながった・・・。国益でなく政権交代を目的にすると取り返しがつかなくなるという悪しき先例。階級、肩書きで人間の価値が決まらないということだけを教えたくて子どもをイギリス留学させ、その教えを戦場でさえ忠実に守った親子の絆に、大切なことを教えられた気分。★★★★★2010/12/19