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「教養」は死んだか―日本人の古典・道徳・宗教

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  • サイズ 新書判/ページ数 287p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784569617053
  • NDC分類 122.04
  • Cコード C0230

出版社内容情報

儒教共同体的価値観の重要性を説く徳育論。

古来、<教養>とは道徳的修養であった。今、教養は<知識>と同義となり、<人格>の形成は忘れられた。教養の本義を中国古典学から説く。

教養がある人とは日本人の場合、よくものを知っている人で、知識人という意味と同じである。中国人の場合、教養とは知識とともに道徳的修養が含まれている。今では日中で知識型と人格型に分かれてしまった教養だが、かつては一体化していた。知識を学習することによって人格を高めていくとしていたからだ。その知識とは儒教的古典であった。古典学習が人格教育になるとされていた。現代日本人において<教養>は<知識>と<人格>に分裂し、知識型教養が肥大化している。これでいいのか、なぜ日本人は知識偏重になったのか、人格と知識の新しい結びつきは可能か、可能とすればどのような結びつきか等についてさまざまな面から考察する。目次は、第一部 <古典をめざして>から<古典を通じて>。第二部 漢文は死んだか。第三部 日本人が忘れたもの――道徳教育・儒教教育。補論 大学の死と再生と。日本人の<教養>の復権について語った著者渾身の一冊。

●第一部 <古典をめざして>から<古典を通じて>へ 
●第二部 漢文は死んだか 
●第三部 日本人が忘れたもの――道徳教育・宗教教育 
●補論 大学の死と再生と

内容説明

古来、中国人は「教養」を知識の習得とともに、道徳的修養ととらえていた。そして、学習する知識は儒教的古典であり、その古典学習を通じての人格教育であった。しかし、現代日本人の「教養」は知識と同義になってしまった。かつては知識と人格は日本人においても一体化されていたのに、今は分裂してしまった。両者が再び結びつくことは何能なのか。本書では、道徳教育・宗教教育の重要性を説きつつ、中国古典学の立場から日本人の「教養」を貫ぬくものを明らかにする。

目次

第1部 「古典をめざして」から「古典を通じて」へ
第2部 漢文は死んだか(忘れられた漢文;明治の「教養」いまいずこ;丸山真男の「漢文の理解」;漢文は死んだか;追悼「最後の経学者」)
第3部 日本人が忘れたもの―道徳教育・宗教教育(型の道徳教育―教育勅語;通俗道徳へ帰れ;道徳教育の将来―ゲームソフト学習と礼部小学校の設立と;宗教教育の可能性)
補論 大学の死と再生と

著者等紹介

加地伸行[カジノブユキ]
1936年、大阪生まれ。1960年、京都大学文学部卒業。高野山大学助教授、名古屋大学助教授、大阪大学教授を歴任、現在、大阪大学名誉教授。文学博士。儒教を中心とする中国哲学史の研究を行うとともに、今日的問題についての批判・提言をしている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うえ

8
「西洋近代の思想では、道徳は人間の良心の発露であり、国家や社会などの他律的介入を拒否する。それが可能なのは、おそら一神教の絶対神の前にある個人は、神に対して己れを隠すことができず、良心によって接することが基礎としてあるからであろう。しかし、多神教徒においては、神に対する畏れがあることはあっても、一神教ほどの絶対的なものではないから、神を畏れざるところがあり、道徳に至る良心には十分な信頼性がない…多神教徒は他律的とならざるをえない…道徳は教育の成果である。これが、東北アジアにおける牢固とした信念なのである」2018/03/31

swshght

8
中国古典学の立場から、日本の教養について考える。教養とは本来、知識と人格の双方が備わっていることを言う。だが、現代においては、知識のみが肥大化し、<教養人=知識人>となっている。人格は疎かになり、倫理と道徳の価値が揺いでいる。この状況にあって、著者は漢文教育と儒教の必要性を説く。近代以降の西洋的思想や教育制度を批判・検証する箇所は面白い。文献や辞典の記述を細かく追っていく手さばきはさすが。ヘーゲルの歴史観や丸山真男への手厳しい批判も読み応えがある。ただ、漢文の楽しさが見えてこない。本書の死角はそこにある。2013/07/18

mustang

3
各方面の識者の言葉使い等の誤りを指摘、批判した著者の新聞コラムが痛快だったので著書を読んでみました。とても良い本です。古典を通じで叡智を学ぶことが非常に大切である。2011/10/17

westwing

2
保守の論客、加地伸行氏の16年前の著作。まず、漢字と日本語の勉強になる。日本3.0でも、日本の大学、入学者、卒業生のレベルに対する課題認識があったが、こと教養という視点において特に強調されている。最初は、坂村健氏と丸山眞男氏批判を筆頭に、現代人の教養の無さをひたすらなげきつつ、古典、道徳、宗教教育の必要性を訴えている。今の小中学校は道徳の時間ってあるなかな?自分は中学生日記や、教育テレビの学校ものを道徳の時間に見ていた。あれが正しいかどうかは別にして、結構大切な時間だったと思う。2017/03/16

としあき

2
タイトルがかっこよかったので手に取りました。たまたま道徳形而上学原論を読み終えたところだったので欧米の一神教的道徳観との対比が面白かった。自分は所謂今時の若者なので漢文と教養についてはピンときませんでしたが読めばなるほどと納得できます。歴史や背景を考慮した主張はやはり説得力があります。2011/07/17

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