出版社内容情報
滋味溢れる文章と写真で味わう奈良の仏の姿。
仏教研究家の著者が古都の仏像の魅力を語り、奈良を撮り続けた入江泰吉が仏像の美しさを醸し出す。仏像鑑賞書として贅沢極まる一冊。
本書の帯には、「美しい写真と滋味溢れる文章……。35体の仏像が現代人の心を潤す」とある。事実、奈良を撮り続け、平成4年に逝去した入江泰吉氏の写真は、凛とした仏像の魅力を見事に写し出している。物言わぬ仏ではあるが、その姿を見つめていると、殺伐とした世に生きる我々の疲れを癒し、心に染みる言葉を静かに語りかけてくるような気がする。
▼一方、先の大戦により家族と一切の財を喪った経験をもつ紀野一義氏の文章は、単にその仏の来歴の解説ではなく、波乱に富んだ人生を乗り切り、「生かされてある幸せ」を仏たちに感謝したお礼言上であり、信仰を職業としない仏教研究家の心の披瀝として、これまた味わい深い。
▼この二人が織りなす文章と写真のハーモニーは、まさに現代人の心に潤いを与えてくれる。仏像鑑賞に興味のある読者は言うまでもなく、日々厳しい社会環境の中に生きる我々に「生かされている喜び」を味わわせてくれる癒しの一冊である。
[奈良のほとけ 1]
●悲しみの光背―薬師寺東院堂聖観音
●第三の眼―東大寺三月堂不空羂索観音 ほか
[奈良のほとけ 2]
●男の悲しみ―興福寺阿修羅
●さわやかに重い眼―東大寺戒壇院広目天 ほか
[京都のほとけ]
●きびしさの底に流れるもの―神護寺薬師如来
●欺され給うなよ―浄瑠璃寺吉祥天 ほか
[飛鳥のほとけ]無条件のやさしさこそ―法隆寺文殊菩薩
●光音天のごとく―法隆寺天蓋飛天 ほか
内容説明
数十年前、修学旅行で古都を訪れた世代。その世代が今、ビジネスの世界で厳しい立場に立たされている。物静かに語りかけてくる仏像を再訪し、安らぎを求める人々が増えているのは、どこか暗示的である。本書は、大戦により家族と財を喪った著者が、仏たちと交わした会話の記録であり、名写真家が凛とした仏の姿を写し出した、現代人に心の潤いを与える一冊である。
目次
奈良のほとけ(悲しみの光背―薬師寺東院堂聖観音;第三の眼―東大寺三月堂不空羂策観音;重く暗い美貌のひと―法華寺十一面観音 ほか)
京都のほとけ(きびしさの底に流れるもの―神護寺薬師如来;欺され給うなよ―浄瑠璃寺吉祥天;閑雅なるみ仏―法界寺阿弥陀如来 ほか)
飛鳥のほとけ(無条件のやさしさこそ―法隆寺文殊菩薩;光音天のごとく―法隆寺天蓋飛天;西瓜の仏さま―法輪寺虚空蔵菩薩 ほか)
著者等紹介
紀野一義[キノカズヨシ]
大正11年、山口県萩市北古萩の妙蓮寺に生まれる。旧制広島高校から東京帝国大学文学部印度哲学科に入学。昭和18年12月学徒動員にて広島第五師団工兵連隊に入隊。将校任官後、南方の戦地に向かう。出征中、広島原爆にて家族すべてを喪い、財を失う。昭和21年2月中国軍より解放され帰国。昭和23年東京大学卒業。宝仙短期大学学長を経て、現在、正眼短期大学副学長。また、在家仏教団体の真如会主幹として仏教文化の啓蒙運動に挺身している
入江泰吉[イリエタイキチ]
明治38年、奈良県生まれ。高等小学校卒業後、大阪のカメラ卸商に就職。昭和6年に独立して写真店を開く。かたわら幾多の写真展に入選。戦後、奈良に戻り、ライフワークを大和路に求め、旺盛な撮影活動に入る。昭和29年『民家の庭』で毎日出版文化賞、昭和51年『古色大和路』『万葉大和路』『花大和路』の三部作で菊池寛賞受賞。平成4年、逝去
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gen Kato
真魚
壱萬参仟縁