出版社内容情報
皇室尊崇、将軍家絶対服従という宿命の中で、激動の幕末を一途に生き抜いた会津藩主・松平容保。武士の義に殉じた稀有の人格を描く。
内容説明
幕末の京都は、尊攘浪士らによる暗殺の坩堝と化していた。その武装鎮圧の大命が会津藩主・松平容保に下される。「この上は家訓に則り、幕命に従って京都を死に場所としよう」。かくして会津藩の悲劇の幕が切って落とされた。―公武合体を成し、天皇の絶大な信頼を得ながら、いつしか朝敵として追討されるという数奇な運命に翻弄された容保。激動の中で至誠を貫き通した希有の人格を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フミ
23
幕末・日本で、貧乏くじを引かされ、愛する領民たちを悲劇に巻き込んでしまった会津藩主「松平容保」を主題にした伝記です。昭和3年生まれの、学者タイプの作者様で、1846年の容保さんの養子入りから、京都守護職時代、そして戊辰戦争、会津若松戦と、情報がビシッと詰められている感じです。京の天誅事件、京の新選組の話が、別で章分けされていたり、全470頁内で、上手く整理なされているなぁ…と感じたのですが「会津若松城戦」になると、地名と人名の量が多すぎて、少し疲れ気味に。「メモを取って勉強出来る」人は喜びそうかな…。2025/02/28
ひらけん
16
歴史にタラレバはないんやけど、こんなにタラレバがあればと思う人はいてないよ。会津松平家に養子にならなければ、黒船が来て攘夷と叫ぶ志士たちが京都を治安を乱し、京都守護職に着かなければ、攘夷の志士たちを斬りまくった新撰組が会津藩お預かりにならなければ、慶喜が弱腰でなければ、朝敵とされた会津藩を幕府が助けていれば、会津戦争も白虎隊の悲劇もなかったよ。幕府に忠義を尽くした結果が新政府から賊軍とされるなんてな。「何すれぞ大樹、連枝を投げ打つ」何故、幕府は我々会津藩を見捨てたのか。悲劇の武将松平容保、憤悶の言葉である2018/05/05
BIN
12
徳川慶喜にすべての罪をなすりつけられたような松平容保を描いた作品です。保科正之の家訓に縛られただけとは言えないが、幕府にも朝廷にも忠義を尽くし、京都守護職中に帰りたいと言っても帰らしてもらえず、肝心なときには追い出されるのが切ない。当たり前ですが、半分以上は会津戦争でそちらがだいぶ詳しく書かれている。まだあまり詳しくない数年前に会津若松行きましたが、その前に読んでればより感慨深かったかもしれない。特に飯盛山とか。生来、体が弱かったのは史実なのかな?2018/11/20
UMA
4
450ページを超える本文の殆どが戊辰戦争に関するもので、京都守護職時代を詳しく知りたい私には少し物足りなかった……とはいえ当時の西軍側の動向や思惑が分かりやすく文体その他も読みやすかったので、これはこれで。篭城の最中にも命が生まれ、祝福され、育まれていくということに、上手く言い表せないけど強く心を揺さぶられた。2012/05/19
くつずむ
2
義とはまさにこのことだよな どっちが正義なんて言うことはできないけど義の有無は新政府と幕府どっちにも明確に存在したよな 賢さや勇ましさに加えて義があることで歴史を進めた偉人もいれば義があることで時代に殺され埋もれた憐れな偉人も同じ時代にいた2023/11/04