出版社内容情報
山崎の合戦で「日和見」の汚名をきせられた順慶。しかしそれは真実の姿ではなかった! 真の賢者として順慶をとらえた長編歴史小説。
内容説明
藤田伝五は両手をつき、順慶を強く見つめて懇願した。「主人・明智光秀はいま洞ヶ峠にて、筒井さまの軍が合流されるのをお待ちしております」。しかし、順慶はこういい放った。「光秀どのに、善戦を心よりお祈りするとお伝えください」と…。山崎合戦において実質上の勝敗を決した男・筒井順慶。日和見の汚名の下に隠された真のリーダーの素顔を浮き彫りにする書き下ろし歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糜竺(びじく)
20
戦国時代、メジャーじゃない大名も懸命に生きていたんだなと感じた。2020/10/05
フミ
19
先に読んだ「柳生三代」の、戦国時代の話が物足りず「大和の戦国時代が読みたい」と、手を出してみました。1560年頃から、松永久秀に狙われた大和の国で、まだ少年の筒井藤政(後の順慶)が、松倉右近、島左近の両侍大将や、一族の武将たちに支えられながら、城を奪われたり、奪い返されたり、愚昧な三好三人衆と組んだりしながら、松永の勢力と戦っていくのですが、次第に織田信長の足音が聞こえてきて…という感じです。やはり、信長上洛前が、知らなかった話が多く、ワクワクして読めました。「山崎の戦い」辺りは、やはり歯がゆいですね…。2025/01/23
BIN
7
筒井順慶を描いた作品です。中盤までは松永久秀との争いで、本拠の筒井城を取られたり、逆に久秀の城を取ったりと互角の戦いが結構描かれてました。洞ヶ峠をどう描くのかと思いましたが、あくまでも大和のため(というより筒井家のためだろう)のスタンスで描かれてました。洞ヶ峠には筒井ではなく明智のほうが来ていたのか。それにしても養子の定次がキリシタンとは。2023/02/09
ゆうへい
4
筒井順慶はとても評価が難しい武将でした。そんな筒井順慶をある程度分かる範囲で描かれています。家柄が興福寺の衆徒でありながら、幼い頃は生真面目なお坊ちゃん系という感じで素っ気なかったです。中盤まではライバルの松永久秀との熾烈な戦いが繰り広げられています。そもそも生まれてから死ぬまで連戦でした。信長に臣従してから、明智光秀とのやり取りが細かく綴られていて、筒井順慶が御家のためでも信長や光秀のためではなく、大和のために頑張ったというのが伝わっています。このように地元や地域に対して貢献するという発想はないです。2020/06/08
韓信
3
世にも稀な筒井順慶が主人公の本格歴史小説。大和における宿敵松永弾正との抗争から、信長への臣従と光秀との交流、そして本能寺の変、山崎の戦いまで、順慶の生涯を描き出している。順慶も弾正も右近左近もたいして魅力的には描かれず、興福寺衆徒という筒井家独特の権力構造にも踏み込まず、ただ平板に順慶の生涯をなぞるだけという、あまりにも面白みに欠けた内容で、素材の鮮度と、この著者らしい良くも悪くも軽い筆致のおかげで辛うじて読み進められる作品。風野作品でも後年の城シリーズより合戦描写が薄いのも難。2015/03/28