出版社内容情報
その天才的な軍略の才をもって秀吉を天下人にした男、竹中半兵衛。名誉よりも美学を求めて30余年の生涯を駆け抜けた武将の生涯。
内容説明
目の前で剽軽な笑顔を見せる木下藤吉郎に、半兵衛は次題に心ひかれていく自分を感じていた。「この男と、もう一度戦場に立ってみるのも悪くはない。あるいは戦火の絶えた世の中が実現できるやもしれぬ」。―名利を求めず、ただ天賦の軍略の才を縦横に駆使して秀吉を勝利に導いた男、竹中半兵衛。名誉よりも人生に美学を求め、三十半ばで夭折した名軍師の生涯を描く長編歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
35
木下藤吉郎が竹中半兵衛をスカウトに来る時に出された茶漬け=焼き味噌に山椒、きざんだ紫蘇の葉が添えられている「このような山居の食事ゆえ、お口にあうともおもえぬが…」「なによりの馳走でござる」とがつがつと食す藤吉郎たちを見て半兵衛が戦場で兵糧を食す時の感触を思い出すとの描写がとてもよい。竹中半兵衛の生涯だけを描いた作品としては秀逸の出来。2011/01/13
kumako
15
民百姓が暮らしやすい世の中をつくるため信長の寄人になった半兵衛。しかし信長の冷酷なやり方に、自分の理想との解離を感じて…迷いや苦しみの場面が案外多くて親しみを感じました。このような人柄にこそ、部下はついてくると思いますが、本人は生きにくいでしょうか。今の働く人も同じかな。2020/05/05
財布にジャック
9
半兵衛には、もっともっと長生きして欲しかったなぁ。2009/12/06
はなん
6
軍師という立場。それは物語の補佐役であるという事でもあり・・・。36歳という働き盛りで逝かなくてはならなかったこの人をどうしようもなく愛しく思う。戦国時代に民百姓のことを心から想い、市井の人たちの幸せのため生きたかったのに、戦という中に身を置くことで反対のことをせざるを得なかった半兵衛。気付かされた最期の時。生きることの矛盾と辛さも容赦なく突きつけられる。2010/11/03
円盤人
5
作者の『立花宗茂』を読むに、奇をてらった独自説に拠るのではなく、一般的なイメージにしたがい、戦国武将を正攻法的に描く作家だと感じた。本作でも同様である。そう言うは易いことだが、天才軍師のイメージは後世に美化・誇張されたものと考えられ、リアリティをもってこれを描いた場合、読者の期待と違ったものにもなりかねない。作者は堅実な筆運びでそれに応えている。また、分量がちょうど良い。450頁の小説では、中途半端なダイジェストになりかねない武将も多いが、本作は過不足なく竹中半兵衛の人生を描き切っており、結末も清々しい。2022/01/11
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- 和書
- あいうえおんせん