出版社内容情報
ロンドンで見つかった鶴屋南北の未発表作品をめぐる不可解な見立ての連続死、そして「南北の作品」自体に秘められた謎。芝居か現か、過去か現在か。時空を越え複雑に絡んだ謎に、森江春策が七転八倒解き明かしてゆく。
内容説明
「わたしが取り返してほしいものとは…鶴屋南北なのです」不可解な依頼から事件に巻き込まれた森江春策。大道具の上に突如現れた男、振り子のような死に様、紙吹雪の中の女…鶴屋南北に操られているかのような連続死と芝居そのものの謎を追い森江は奮闘するのだが…。
著者等紹介
芦辺拓[アシベタク]
1958年大阪生まれ。作家。同志社大学法学部卒。1986年に「異類五種」で第2回幻想文学新人賞に佳作入選。1990年に『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞を受賞。森江春策シリーズを中心に、様々なジャンルの作品を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪紫
40
今回、森江が挑むのは歌舞伎狂言の作者、鶴谷南北の未発表作品(芦辺さんの創作)の処遇とそれを演じようとする芸術監督の周囲で起こる連続殺人。個人的には行き過ぎた技巧派が災いしたのか、南北作品への取り組みとその真相のインパクトが強かったために後に用意された現代の事件がどんでん返しの連続なものの(むしろそれ故に?)霞んでしまった感。犯人この人でいいよね?と思う感じに(第3の殺人もえ、被害者のあれってそういうヒントに繋がるのと困惑)。読者に歌舞伎の知識がないと読むの難しいぞ。2020/08/21
RASCAL
25
学校の歴史の授業では、寛政の改革の松平定信が善玉で、賄賂を取った田沼意次は悪玉というニュアンスだったが、最近の歴史では、重商主義の田沼を、朱子学に毒されて否定した松平定信こそ、経済面でも文化面でも江戸を停滞させたという説が主流のようだ。そんな歴史の話はともかく、忠臣蔵と見せて松平定信を皮肉った鶴屋南北の奇想天外な歌舞伎シナリオをベースに、現在の大学で起こった殺人事件の謎を解くという、壮大な歴史ミステリー。ほとんどが著者の創作でしょうけど、よくここまで考えたなと感心。2020/12/23
二分五厘
23
ロンドンの骨董店で発見された"鶴屋南北の自筆台帳"。その『銘高忠臣現妖鏡(なもたかきちゅうしんうつしゑ)』を取り返してほしい─森江法律事務所に持ち込まれた依頼は、幻の脚本の公演をめぐる殺人事件に発展していく。陰惨な事件の謎と共に、南北の遺した脚本の謎も興味深い。仮名手本忠臣蔵の登場人物を配しながら、異なる筋立てで進んでいくのは何故か。しかも「いかがですかな、森江さん。その台帳の出来栄えは」森江に叩きつけられる南北からの挑戦。果たして台帳は"誰のために"書かれたものなのか。そして天竺徳兵衛の正体とは。2021/04/11
Aki
21
歌舞伎テーマのミステリ趣向に興味が湧き手に取る。とは言っても自分自身歌舞伎に関しての知識がなさ過ぎて苦戦。しかし縷縷繰り出される時空を超えた物語は破天荒ながらも練られており面白い。犯人探しという点では構成が複雑すぎて消化不良。それでも和製ミステリの一ジャンルとして追いかけていきたい。2021/04/22
イシグロ
21
森江春策はロンドンで発見された鶴屋南北の未発表台帳を取り返す依頼を受ける。作品の周辺で次々と起こる不可解な見立て殺人。しかし最大の謎は南北が遺した作品そのものにあった。森江春策が時代を超えた謎に挑む。 以前からこの作者の作品にはいつも読みにくさ、入りこみにくさを感じていて、なぜかと考えると、会話文に癖があるんですよね。余分なト書きが多いし、芝居がかった不自然なセリフが多い(あと登場人物が好きになれない)。 作品としては文句なく力作ですし、情報量には圧倒されました。高評価の人がいるのも十分納得はできます。2021/01/24