出版社内容情報
「主人公たちの人生が、いつしかある小さな公園で交差する全5篇を収録した胸に迫る連作短篇集。書き下ろし。「ある事故」で突然障害を負った幼馴染への心の葛藤を描く「小さな木の葉に宿る一本の木」他、「生きづらさ」を抱えた主人公たちの人生が、いつしかある小さな公園で交差する全5篇を収録した胸に迫る連作短篇集。書き下ろし。
小手鞠るい[コデマリルイ]
内容説明
不思議な公園にぽつんと佇む優しい形をしたベンチ。きょうもここで待っている。あの人を。あなたを―見えない、歩けない、居場所がない、コミュニケーションができない。心の傷や生きづらさを抱えながらも、健気にしなやかに生きる愛すべき人々の「普通の」物語。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
1956年、岡山県生まれ。同志社大学法学部卒業。1981年、第7回サンリオ「詩とメルヘン賞」を受賞。1993年、第12回「海燕」新人文学賞を受賞。2005年、『欲しいのは、あなただけ』(新潮社)で第12回島清恋愛文学賞を受賞。2009年、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』でボローニャ国際児童図書賞を受賞。ニューヨーク州在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
123
『普通』ってなんだろう・・ね。それを考えるといつも苦しくなる。健常者と障がい者。障害者でも見た目だけでわかる障害と、そうでは無い障害を持つ者。健常者とて個性がそれぞれだ。だから人間関係は難しい。そして人は一人では生きていない!そこには必ず他者の手や心が不可欠なのだ。『神樹のゆりかご』の母には言ってあげたい。「育児書だけが全てではないのだよ。」と。連作短編5作品ちょっと柔らかく、ちょっと節もあって、読み手によっては棘もあり・・そう、1本の木のようだ。最後の話が好きだ。そして思う、やっぱり『普通』ってなに?2016/10/18
ゆみねこ
83
手足・目・知的なもの、様々な障害を負った人たちの日常。普通ってなんだろう、幸せってなんだろうと考えさせられました。「木を抱きしめて生きる」、じんわり感動。『あんずの木の下で』を読むと、もっとこの本の良さが分かります。「神樹のゆりかご」は痛々しくて辛かったです。2016/11/03
美登利
83
表紙絵の曲がり木で作られたベンチがどの話にもちらりと姿を現します。生まれ付き身体の一部が不自由だったり、事故で障害を負った人たちが出て来る短編集。どの話にも明確な繋がりはないのだけれど、強い悲しみの中にもほんの少し明るさが見える話が多くて、涙が滲むことがありました。「誰かの助けを借りなければ生きていけない」私はそれは障害を持つ人だけでは無く人間は誰でもそうだと思っていますが、特別扱いされたり反対に無視されたりする、逆差別という言葉と匿名性が欲しいという気持ちにはハッとしました。初めと最後のお話が好きです。2016/10/11
itoko♪
79
誰かの助けを借りなければ生きていけない人たち。世間では障害者と呼ばれる人たちと、家族や友人との繋がりを通して、『人の本当の幸せ』とは何かを、優しく繊細な文体で描かれています。五篇からなる短編集ですが、主人公たちの名前が樹木や植物に関連していたり、曲がり木で造られたベンチが登場したり…そこかしこに自然の息吹やあたたかさも感じます。冒頭の『小さな木の葉に宿る一本の木』がとても良かったです。2016/10/10
Ikutan
73
小手鞠さんの優しいメッセージが伝わってくる一冊。事故でコミュニケーション能力を失った幼馴染み。視力を失っていく母親。交通事故後に車イス生活になった女性。など生き難さを抱えた人たちと彼らに関わる人たちの物語。特別ではなく、普通であること。彼らのそんな切実な望みが、温かいストーリーから伝わってきます。そこには、樹木の曲がり木に例えて、存在そのものを丸ごと肯定してくれる優しさも。小手鞠らしい自然溢れる美しい描写が心地いい。そして最終話はあの『あんずの木の下』の物語とリンクしていて思わず涙が。心が浄化されました。2016/11/06