出版社内容情報
父親の「自殺」で多額の遺産を手にすることになったアンは殺人と確信した。それを証明するには密室を破らなくてはならないのだが……
父親の「自殺」で少なくない遺産を手にすることになったアン・ネルソン。
現場は完全な密室状態だったという。しかしあの父親が自殺するなど考えられない。
殺人を証明するには密室を破らなくてはならないのだが……。
内容説明
小学校教師アン・ネルソンを三年ぶりに訪ねてきた母親。別れた父親が手にした遺産の話をし、毒づいて帰っていった。その二カ月後、父親が「自殺した」と連絡を受ける。これによってアンは父親のその遺産を相続することになったのだが、そもそも父親は自殺するような人間ではない。アンは真相をつかむべく行動に出たのだが、さまざまな「障害」が彼女とその遺産の前にたちふさがっていた。
著者等紹介
飯城勇三[イイキユウサン]
1959年生まれ。東京理科大卒。エラリー・クイーン・ファンクラブ会長。著書に『エラリー・クィーン論』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
61
この作品はペーパーバック・オリジナルだが、今日では、ペーパーバック・オリジナルの作品群はエラリー・クイーンの作品ではないことが分かっているし、代作者の名も分かっている。日本では、そういった代作の中でも読める作品3作を〈エラリー・クイーン外典コレクション〉として出版しており、本作品はその中の1つ。密室での死の真相を探るオーソドックスな形のミステリだが、クイーンらしさが感じられ本格ミステリとして優れているとして選ばれた作品だけあって、おもしろく読めた。2022/02/25
綾なす落書き
7
図書館本。エラリークイーンらしさを感じるロジックはある。ただし、濃密かと言われれば答えは否だ。ページ数に比例した、と言われればそれまでだが……。どうも名作とは言い難い。そんな煮え切らない感想を覚えましたが、解説を読むに、納得の一言。クイーンの名が無ければ、それなりに楽しめたのかもしれませんが、同時に読むことも無かったかと思います。2015/12/16
飛鳥栄司@がんサバイバー
6
大胆なトリックにびっくりさせられた。手がかり的には少し弱いけど、論理的な導きが成り立っているところはクイーンぽい。ただし登場人物の色付けに失敗している気がして、不自然な感じを最後まで払拭できなかった。タイトルにチェスプレイヤーと謳っているわりにチェスの要素がミステリに活かされていないのも残念な点。解説を読むと、それでもかなりリーの手が加えられているようで、ペーパーバックなりの質に到達できたのではないだろうか。やはり他人の作品として読むのが無難だ。クイーンの作品として先入観がなければ及第点は取れると思う。2015/09/22
スズツキ
3
ジャック・ヴァンス代作。クイーン名義の代作が数ある中で今回の「外典コレクション」として刊行する際に、ミステリとして優れている今作が先陣を切ったらしいが、うーん、正直このレベルで優秀というのはかなり厳しいな。ネタの枯渇してきた海外本格の事情が垣間見える。2016/01/22
やっす
3
序盤から中盤にかけてはちょっと退屈かなと思いましたが、アンが何者かに命を狙われるあたりからサスペンス色が増して、そこからは最後の関係者一堂を集めての真相解明に至るまで結構楽しく読めた。手がかりの提示とそこからトリックを暴いていくロジックの流れはなかなか良く出来ていた様に思います。しかし、良くも悪くもミステリとしての評価がその密室の解明一つにかかっている様に見えるのが少々物足りない。解説で触れている真相の反転もそれほど機能しているとは思えなかったし。クイーンの名を度外視すれば、それなりに楽しめます。2015/12/14